望む家
第四回 自然エネルギー利用の試み
「望む家」では、市販の換気扇・温度スイッチ・ダンパーを使って、太陽で温められた屋根の空気を床下に送り込む試みを行っております。
温度スイッチ・ダンパーの制御によって、夏は外に屋根の空気を排気し、薪ストーブで暖をとっているときはその暖かい空気を床下を通して建物全体に送ることもできます。
第三回 天井、空間の仕上げ
この家の主役は、家から望む景色、その景色の中で繰り広げられる家族の生活です。
眺望、これからの家族の生活に当たって持ち込まれるお客様がこだわりを持って選ばれた家具を引き立たせる背景となるよう、内装はできるだけニュートラルなものとしました。
壁(ルナファーザー:ドイツ製の再生紙(白色)、天井(シナ合板)とも1種類のみに限定しています。
天井のシナ合板(1枚1m×2m)は、わずかに隙間を開けて貼り並べることで、2階の正方形のワンルームを碁盤の目のように位置整理し、部分的に貼り方向を変えることで、緩やかに空間を分節しています。
設計段階において、方形屋根(四角錐状の屋根)の構造を見せ、屋根なりに傘が被ったような包まれた天井とすること、傘の柄のようになる真ん中に立つ大黒柱を立てることも検討しましたが、2階広間からの眺めを優先し、外に視界が導かれるよう平らに天井を貼ることにしました。
また、真ん中に立つ大黒柱も、強すぎる中心性を持つこと、空間利用を制限する配置となることから、柱を分散配置することにしました。
第二回 場所
家づくりは、建物づくりではなく、くらしづくり部屋づくりではなく、場所づくりだと考えています。
住宅は、家族の居場所となって初めて家となります。
この家では、2階の「外を眺めるステージ」に、眺め(外部とのつながり)と光(時間)をつくる開口部によって場をつくり、家族の居場所、各人の様々な居場所が重ることによって、家族が集まる場所がつくられることを目指しています。
正方形のワンルームの中に散りばめた様々な場所をつくる仕掛け。
2階に唯一存在する内部壁、それを背にする 薪ストーブ、デッキ、カウンター、キッチン、畳、持ち込まれる予定の家具・モノ それらの配置と開口部の関係。
しかし、これらの要素はあくまで仕掛けであり、そこで行われる日々の生活・出来事の中で、場所は具体的に、生きられた空間として住まい手の心の中に現れていきます。
住まわれてから訪れるお客様の家で、創造以上の場所が出現していることに驚かされることも度々です。
第一回 宇宙船・大きな木
小高い山の上の眺めの良い場所、緑を見て暮らしたいと思いこの場所を選択されたお施主様。
この家は、「外を眺めるステージ」をどのようにつくるかを考えました。
浮遊する「宇宙船」。家族を包み込み、大地に根を張った「大きな木」としてのイメージに基づき、眺めの良い2階に、家族が集まる広間(四方が眺められる正方形のワンルーム)を配し、生活の基盤としての水周り・諸室を1階に集める明快な構成となりました。
2階に張り出した大きなバルコニーは、風と空を感じるもうひとつのステージです。
家から望む景色、その景色を背景として家の内外で繰り広げられる家族の生活。景色が家族の場所の記憶になる家です。