美しが丘の家
第三回 「こだわりⅡ」
軒が深い家は雨にも濡れ難く家の持ちも良くなり、奥ゆかしさも感じられます。総二階の家が支流の今日は下屋が被った家を見ることが少なくなって街並みも薄っぺらくなったように思えます。
下屋が付いた二階屋のこの家は一階の勾配天井が室内で二階と空間のつながりを造っています。家族の気配を感じ、空気の流れ・通風を楽しむことで夏の暑さも凌げると思います。そして、夏の直射日光も深い軒の出で防げます。窓先には広い濡れ縁・デッキを設けました。季節に応じた楽しみ方がのんびりと部屋と一体になってできるはずです。
階段を昇った二階ホールは、ご主人が体と頭の体操をする特設コーナーになっています。ここと一階の居間と食堂は地窓障子で繫がっています。気配を思いやりながらゆったり時をすごせます。
室内温熱環境は窓性能、断熱と気密で次世代省エネ基準をクリアーし太陽熱利用で冬暖かく、夏涼しい家になっています。
第二回 「こだわり」
玄関の向きは、設計で悩むポイントのひとつです。今回もバス道路に面しており、一段敷地が上がっていること、隣家の玄関と隣り合っていることで不便を感じていたようです。
アプローチを変更せずに位置と向きを変えて対応しました。
北側にあった食卓を日の光を楽しみながら過したいということで、南側に設けました。食卓東側壁に以前の家で使用していた堅木のカウンターが乗った家具を再設置して記憶を紡いでいます。この家具、こげ茶色で存在感があり空間を引き締める役も果たしています。
一階中央に畳8畳間をキッチンに接して間取りしました。多目的使用を考慮してこの場所をご希望されました。奥様の趣味の部屋、お客さまが泊まる部屋、健康を害した時の部屋とその時々に対処が出来ます。和室の特徴を今に活かした部屋になりました。
近隣の家との大きな違いは外観の意匠です。低く水平に延びる日本民家の軒は美しさを強調していると思います。この家は軒先を出し、低く被るようにしています。深い軒の陰影が奥行き感と家の佇まいを豊にしていると思います。日本の心を感じる家になりました。
「ふところ」の深いOMソーラーの家が出来ました。
第一回 「案が決まるまで」
自分の時間が自由に使えるお二人の家です。
計画案の流れを見ていくと、お二人の要望が見えてきます。
設計カードを記入していただき要望を聞くのですが、特に要望はありませんでしたが、二人が適当な距離感を持ちながら自分の時間を楽しみたいということのようでした。
最初の案は、敷地に余裕があったので平屋建て案を提案しました。生活も楽でしょうし、L型プランで光も何処かに入り込むようにしていました。庭前に部屋が飛び出すカタチに抵抗感をお持ちでした。庭先は大きく残し他の家より出さないことが施主の心に暗黙の了解としてあったようでした。
そのご、変更し規模を削ったりの提案をしましたが、納得を得られませんでした。
そんなことを繰り返すうちにお気持ちが見えてきました。まずは、近隣との関係で水回りは建替え前の家と同じ位置がいい事、八畳の趣味部屋が家の中心で多目的に使用できること、二階の一部が一階屋根と空間的に繫がっていることが明確になってきました。
案が決まりました。