緑と火と読書
緑
凡そ10年前に問い合わせをいただき、土地探しをしながら18回の構造・OB・新築の見学会に参加いただきました。昨年、ついに「住まいの環境を大切にしたい」施主の思いがかなう土地に出会うことになりました。
東南方向に公園と広大な境内に面し、これからも変わることがない緑豊かな借景とそこに建つ樹木が造る木漏れ日の採光を楽しめる敷地です。「眺望を家族で共有しながら団欒したい」もっとも周囲の景色を楽しめる南東角にある食卓テーブルが家族の心の中心で、食事、団欒、勉強となんでも可能です。2階の同じ位置には、ひとり落ち着いた気持ちで眺望を楽しめ、読書のスペースを設けました。大きな角窓からは二人の子供に名づけた樹木のサクラ、カエデも見られ、季節とともに移り変わる表情や日々の成長を観察できます。
二面道路の角地の敷地に対して、東南方向に建物を振って配置したので、整然と並ぶ周囲の家の視線がさほど気になりませんし、杉板の外壁と相まって街並に変化をもたらしています。また、それぞれの角に三角形の土地が出来おかげで、個性の違った庭を用意しました。
火
火緑に満ちた土地は、太陽の恵みも十分に得られます。冬は、太陽熱を活用するOMソーラーで温められた空気が暖房と換気を両立させ、窓からの日射を内奥まで取り込む配置にしました。夏は軒、庇、公園と境内の緑が冷やした大気を取り込むパッシブな家です。
もうひとつの環境装置が薪ストーブです。薪ストーブの遠赤外線熱は吹抜けを介して家全体に行き渡り、体を包み込んでくれます。思い入れの薪ストーブの背面に積まれたアンテイークレンガは、蓄熱帯にもなり温かさを持続させ、家のアイポイントにもなっています。暖められた空気は上昇気流で煙突を通り排気する換気扇の役割も果たしています。このストーブは、排熱を利用してお湯や料理もできる優れものです。冬の部屋は乾燥しますが、お湯を沸かすことで加湿器の役目もしてくれます。OMソーラーと薪ストーブの2つのシステムが補完して、自然により近い環境をつくります。洗濯物の室内干しも出来ます。
読書
仮住まいにお伺いしたとき、ダンボール箱が部屋に積みあがった荷物の中、たくさんの本が壁一面に隙間なく並んだ本が印象的でした。2つの別の家のものがあつまるので、当然ものがあふれます。身軽になっていただく努力をしていただき、各人のスペースと共用部に収納スペースを確保しました。収納にはなるべく扉で仕切らず、見えない工夫により使い勝手も考慮した造りにしました。
部屋の仕切りは、将来の家族構成の変化も考慮して壁を可変可能な間仕切りにしています。本の収納は二階の共有部に手持ちの大容量の本棚を置く部分と作り付けの本棚のスペースを設けて、第二のリビングとして、のんびりと読書ができます。
玄関土間に続く奥まった納戸と直接出入りできる納戸(食品庫)は、増えた家族を賄う収納量を確保しています。ロフト収納へ続く階段にも棚を設けて小物を飾ることができる、ミニショールームでしょうか。