手の届く暮し
第1回 敷地の特殊性
老後の生活を孫や子世帯家族の近くですごしたい。そんな思いからこの住宅の計画がはじまりました。21年前に完成した隣地に建つソーラー子世帯の敷地は、傾斜した道路面から4mほど高く、人通りが多い駅への抜け道に面しています。緑が生い茂り、土手が張り出して、道路が狭まっているので地域でもなにかと目のつく場所でした。
壇上の平坦地に接地して建てるとそこまで登るのが一苦労であり、前面道路が狭あいなため、セットバックをして道路境界上に擁壁を造る必要もあります。そこで、道路面まで建物を掘り下げて、地下の玄関と車庫は擁壁を兼ねたコンクリート造としました。さらに、計画途中で、土砂災害警戒区域にも指定されました。結果、前後から挟み撃ちされる格好のプランになりました。
さまざまな法に規制されながら、必要最小限のコンパクトな家づくりがはじまりました。
第2回 おやこの2棟
ひとり暮らしの現在の家には、思い出のつまった様々なものがあふれていました。打合の度に、「断捨離」をお願いしつつ、「モノ」の配置、使い勝手の検討に時間を費やしてきました。
敷地条件の関係で、長方形となったプランは道路側を生活スペースとし、山側を水廻りとしました。南面(道路側)にバルコニーと窓を広くとることで、日射と採光が十分に得られた明るい場所にしました。北側、水廻りの窓から漏れる明かりは、隣家子世帯住居の台所、居間から見守ることができ氣遣いと安心につながると思います。ここにも隣接して建つ二世帯の意味があると思います。
多趣味な親子世帯の為に2階は半独立の多目的スペースを設け、バックヤードから直接出入りできるようにして、将来的な暮らしの変化に対応できるよう配慮しました。並んで建つ2棟は、ウリふたつではありませんが、自然素材を使った似たもの同士、暮らしを補完し合い互いに手助けができる『手の届く暮らし』を目指しました。