パン屋さんと花と富士
第三回 「現在進行形」の家―トマソンの理由
西の壁面をみると、宙に浮いたドアがあることに気づくと思います。
どこにもいけないドア。
なぜこんなものがあるのでしょうか?
その理由は、現在だけではなく未来をも考えているからです。
今は空き地になっている西側のお隣。
西側からは、富士山と大山が望めます。
山を眺められるようにバルコニーのあるプランもありました。
しかし、バルコニーの目の前にお隣のお家がたってしまったら、
バルコニーをつくってもみられなくなってしまいます。
そこで、最初はドアだけにして、お隣がたってから、
富士山が見える場所にバルコニーをつくることにしました。
現在進行形で、未来に続く家なのです。
第二回 スキップフロアにした理由
この住まいは、土間・和室・台所・居間、床の高さがそれぞれ違います。
1階の床より、台所を低くし、和室の床を高くしました。
食事は、キッチンとつながるテーブルで食べます。
あわせる椅子は、和室の床です。
床を椅子とするために、和室の床を1階の床より高くしました。
そして、和室にすわってごはんを食べる人とごはんをつくる人、目線が近くなるように、台所の床を1階の床より低くしました。
人と人の距離感も近く感じられる家です。
第一回 オープンテラスを生かした、スローカフェ
この家は 将来は お客様が立ち寄り、出来立てのパンを食べながら、
ゆっくりとした ひと時を過ごせるようなカフェにすることも考えてつくられました。
カフェとなるスペースは、お客様が集う場所でもあり、住人がくつろぐための場所でもあります。
そこで、カフェのパブリック性と 住居のプライベート性をどのようにとるかを考えました。
仕事と私生活の両方で、中心となるキッチンを 建物の中心に据え、
キッチンから プライベート空間である居間、キッチンから パブリックであるお店スペース、
どちらの部屋にも、すぐに 行くことができるようにしました。
プライベートなスペースである2階部分+1階居間と、パブリックなお店スペースは、
互いに関係を持ちながらも 分かれた空間とするため、
建具で仕切りつつも吹抜けでつなげるようにています。
玄関へと いざなうアプローチには屋根がかかり、
オープンテラスのように、外と内を適度につなげ、また、仕切っています。
初期のスケッチ:まだ、お店の案がなかったころ。