麒麟の家
第二回「伸びやかな住まい:ハード編」
この伸びやかさと快適な住まいを結びつけるのは、安心できる構造と快適な温熱環境を確保することが重要と考えました。
古材は材の寸法からいえば十分な強度を兼ね備えていると考えられる雪に耐えてきた大きいものでした。
そして、幸運にも雨漏りがなかったので材の腐り、シロアリの被害もみられませんでした。
杉、松、栗、欅など周りの山に生えていた材が使用されていました。
元の部材は木のダボや長い柄で組まれていましたが、屋根の重さも茅葺から軽い金属屋根にしたことや耐震強度を増すべく長いボルトで緊決することに努めました。
地震にも大揺れすることもないようです。
これらの材をくみ上げると大きな空間の住宅になります。
夏は風通しだけで快適に住めると思いますが、冬の冷え込みはやはりきついと考えられます。
そこで、快適な温熱環境を考え断熱材の厚さを増増強。更に、太陽熱を家に取り込むOMソーラーを採用して、要望事項二つ目の「ほかの部屋にいる人の様子がなんとなくわかる」オープンな空間に応えることにしました。
家は心地いいジムネジアム
第一回 「伸びやかな住まい:ソフト編」
住宅地が近くまで迫っていますが、原風景の自然がまだ残る木々に囲まれた敷地が建設予定地でした。
元の樹木を少しでも多く残すべく計画をたてました。
いくつかある要望のうち、設計カードに「雨が降っても外で作業が出来るスペース」というのがありました。そこで、北側玄関脇の駐車場を大庇で覆うこととしました。片流れの庇の壁には棚を設けて工具類の収納、外作業の道具類が置けるようにしました。
また、この屋根は東側の勝手口ともつながり雨にも濡れずに使える多目的作業スペースになっています。昔懐かしい「五右衛門風呂」の火炊きもこの庇の下に設けてあります。
この庇のお陰で、水平方向の広がりを見せる立面は、鳥が羽を広げた感じにも捉えられます。
この家を支える構造材は、幕末に造られた東北地方特有の「曲家」の古材を使っていますが、今回は母屋の部分の材料を活かすプラン作りをしました。材料も大きかったですが、柱間寸法は1910mm(6尺3寸)でした。京あたりの棟梁の仕事だったのでしょうか。
柱の垂直方向が高いのと小屋組みの間を利用して、中二階を設けてみました。ご主人の隠れコーナーの予定ですが、子供たちにとっても愉しい冒険コーナーになりそうです。
居間の前にデッキを設けて木々の育つ庭へと皆を引き出してくれると思います。
伸びやかさと変化を備えた現代民家