うさぎ谷の家
第二回 「realize」施主様とともに
打合せは敢えてそのイメージを一度壊してみる作業が続いた。自分たちが本当に求めていることをより明確にするために、細部の話が何度も続く。
一番議論したのは、天井。その高さ、仕上。そのころには一度破壊されたイメージが各自の中で、自由に飛び回っていたのではないだろうか。最終的にはプランも仕上げも最初のかたちに近いものに戻ったのは興味深い。
この家の木材は構造も造作も良質な紀州材の杉と桧がふんだんに使われている。
それらの木をより美しく見せるには?その木材に最も心地よくつつまれて生活するには?
議論のテーマはこの点に集約されていた。意匠上最も気を使う作業の一つである。
お施主様は根気強く、最後の最後まで考え続けた。後は出来上がりを待つしかない。
第一回 「腑に落ちる」設計の始まり
――施主様の要望は、
家庭菜園もできる広い庭。
その庭を望む開放的なLDK。
柱・梁を現しにした空間と障子、畳、ペレットストーブ等々でした――
社内コンペにおける鈴木の案を聞いた時に、腑に落ちるという感覚を味わった。
それは皆も同じだったのではないか。その案が採用された。
施主様へのプレゼン。施主様にも伝わったと思う。
我々は同じイメージを共有し、一軒の家づくりを始める。
なぜ、何が腑に落ちたのか。一言で言うと機能と空間の調和。
例えば、玄関と居間との間にあるアイランドのキッチンの存在が独特である。人を出迎え、居間でくつろぐ者を見守る。動きを特徴とする高い視点の移動が考えられている。アイランドの直線上に洗面室を設け、家事動線をスムーズにしている。そして、正面には階段が真っすぐにのびる。
動きの機能が水平垂直にまとめられ、そのさきに畳の居間を配置。視点が下がるスペースには地窓と下がり天井。
その空間に佇む時。近くで他者が軽やかに、若干スローに動きまわる映像が思い浮かぶ。
温もりと動線プランとの調和。
さてゴールは見えた。後は打合せを重ね、それをrealizeすること。本当はそのイメージを超えるsurpriseを求めながら