望む家
出典:kaki no tane vol.11 より
望む家 T邸
「次は、これをやろうよ。」
手づくり
眼下に広がる、乗馬クラブと裏手に広がる畑に挟まれた環境にTさんの家は建っています。道を登っていくとこの家を特徴付けている、大きく張り出した1階のデッキと2階のバルコニーが目に入ってきます。2階のバルコニーは当初に設置したものですが、1階はご主人の手づくり作品で、駐車場と薪小屋の屋根を兼ねています。そして、2階バルコニーから吊るされたお手製のブランコは子供たちに大人気で、家に上がる前にひとしきり遊ぶのがお決まりのようです。玄関入口脇の物置の表情は訪れる人の心を和ませ温かく迎えてくれます。
「自分たちでできるものは下手でもつくり足していっています。必要というだけじゃなく、次はこれがしたいね、と作戦を立てるのが楽しいんです。」とうなずき合うご夫婦。使ってみてよかったら固定しよう、というものが家中にあるそうです。自分の家だからできることを思い切り楽しんでいらっしゃいます。
360°ぐるり
ワンルームの2階リビングは360°周囲の緑と空に包まれています。
「この辺りは夜になると本当の真っ暗け。星がキレイなんですよ。朝目覚めるとまず太陽を見るようになりました。」雛鳥が家族と並んで飛ぶ練習をしているのを眺めながらご飯を食べることもあるそうです。また、自然の営みや、空の色を見て、それらを大事にしながら物事を決めていくTさん一家。雨のにおい、珪藻土のにおい、最近では貴重な焚き火のにおいに安らぎを感じたり、季節の虫や鳥の声を見つけたり、時間が裕に流れています。
冬のお気に入り
Tさん家族にとって、寒くなると存在感をますものに、お気に入りの薪ストーブがあります。
「早く使いたくて、気は急くんです。でも・・ちょっと待てよ、もうちょっと木々の葉っぱに色がつくまで—と、亥の子餅じゃないけれど、初めて火を入れる時を大切にしているんです。」と話してくださる奥様。
薪ストーブと聞くと男性が主役のイメージですが、ご主人に「(火をつけるのは)カミさんの方がうまいんですよ」と言われるほどでs。
「設計中、提案されたときには(薪ストーブを)使うイメージがなかたけれど、今では燠火を残すのにも慣れてきました。嬉しさもあってつい日課のように焚いてしまうんです。」と手間のかかる火の面倒をみていらっしゃる奥様に頼もしさを感じます。
それが、きっと楽しみ、なんですね。
層をます
この家の設計にあたり二つの事を考えました。一つは真四角なプランの家に興味を持っていました。しかし、ただ四角い建物があるのでは面白くありません。Tさんはその後デッキや、倉庫を少しづつ作り足していってくれています。それらが層になって奥行き感が出てきました。もう一点は、屋根と二階天井の形状でした。Tさんは選択しなかった斜め天井にしていたらどうだっただろうかと周囲を眺め、イメージしてみることもあるのだそうです。「そして今のスッキリ感に”納得”します。」というその言葉からもひしひしと住まいを愛しむ気持ちが伝わってきます。
夜間飛行
近くにあるギャラリーStudio Stickで一目惚れしたという、おもちゃ飛行機が二階道路側窓辺に吊るされています。Tさんは家路の果てに窓からのぞくその飛行機を見るそうです。なんせ、家から遠く羽田空港を離発着する飛行機の灯火が見えるのだそうですから、鈴木の「小さなアッパーライトで照らしてみたらどうです?最高に楽しめますよ!」の提案に「夜間飛行。早速やろう!」とご主人。次の作戦に取り入れていただけたようです。
お気に入りの家具を手に入れるように、照明器具も愛着を持てるものを買い揃えていくと部屋の趣が違って見えてくるものです。してみてはいかがでしょうか。
そうやて可愛がることで、益々Tさん好みの家に進化すること請け合いです。