ジャリジャリジャリ・・・韓国民族村や河回村(ハフェマウル)を歩き回っている時、
砂地を歩く・・・この独特な感触と、音を、楽しんでいる私がいました。
子どもの頃、一人っ子の私は、夏休みに行く祖父母の山口の町を、
遊び相手がいなく手持無沙汰で、ただただ、一人歩き回っていました。
ジャリジャリジャリというその音は、その忘れていた、遥か遠い思い出を引きずり出してくれたのです。
おそらく日本も韓国も懐かしく思う、同じような光景を、持っているように思います。
ソウルにしても然りです。左から、御徒町?原宿?六本木?日比谷?そんな風に見てしまいます。
されど、東京の街と同じくソウルの街も、動物的、感覚的な私には、元気さを感じられませんでした。
なんとなく疲れてしまっている、飽きてしまっている様な・・・
世界全体が先が見えない昨今、都会の街が、薄っぺらく感じてしまうのに対して、16世紀以来の河回村(ハフェマウル)は、静かな強さを感じます。
静かな強さと言えば、韓国民族村で、84年間、真鍮のはしやスプーンなどの鋳物の型を一生懸命作っている双子の職人さんが、いらっしゃいました。
彼らの年齢を考えると、まさに激動の歴史の流れの中ですが、ただひたすら自分達が納得するものを作っている、その日々の繰り返しが84年間という歳月に過ぎなかった、とでもいうような、静かな強さが、
そこにはあり、感銘いたしました。
ただひたすら自分達が納得するものを作っているのは、木工作家ヤン ビョンヨンさんも同じです。
1人用のテーブルとして使われるお膳【ソバン】。椅子とテーブルの生活が韓国でも主流となり、
本来の用途で使われことが少なくなってきた中で、彼はその良さを残したいと、
高校で建築、大学で産業美術を学んだ後、この世界に入ったようです。
日本の柳宗悦に傾倒し、日常生活で使われる道具の美しさ、奥深さに目覚めたとのことですが、
その作品の美しさ、洗練さは、世界各国からオファーが来る域に達してます。
昨年フランスで行われた展覧会では、NYプリズンタワーをデザインしたポーランド人の建築家から、
1つ1つの脚のカタチも違う、斬新的なお膳【ソバン】を頼まれたようです。
先が見えなく、元気のない世界事情の中においては、
ただひたすら自分の追い求めるものを追求することそ、大事なことかもしれません。
迷うことなく、ぶれることなく・・・
”いえづくり”というクリエイティブな作業に関わる私達においては、尚更であると、
今回の旅行で、勉強させていただきました。(FB西野博子)