ドキュメンタリー映画「人生フルーツ」を
80歳の母と、25歳の娘と観ました。
建築家、津端修一さん(90歳)と奥様の英子さん(87歳)の
日々のを暮らしを、修一さんの亡くなる2年前から追って紹介したものです。
二人は、修一さんの師であるアントニン・レーモンドの自邸を模したモダンな平家に住み、
その家の前には、雑木林と畑が、広がります。
『風が吹けば、枯葉が落ちる。
枯葉が落ちれば、土は肥える。
土が肥えれば、果実が実る。
こつこつ、ゆっくり。』
『こつこつ、ゆっくり』・・・お二人のペースで、自分達の食べるものを栽培して収穫する、
その半自給自足の、手間ひまかけた、丁寧な生活ぶりは、
母のような、ある程度の年齢層の人達には、
忘れてしまっていたもの、無くしたものを呼び覚まし、
娘のようなこれからの若い人達には、
理想であり、あこがれの存在のように映ったようです。
私は、修一さんが信条としていた、
「家は、暮らしの宝石箱でなくてはいけない」という
モダニズムの巨匠ル・コルビュジエの言葉にハッとさせられました。
歳を重ねてくると、必要最小限のものしか持たず、
住まいもマンションのような、鍵1つで生活できる暮らしが、
楽で、理想的ではないかと最近思い始めていました。
『暮らしの楽しさって、 この手間ひまをかけることにあると思っています』
『自分の手足を、日々動かす暮らしが、本当の豊かさなんじゃないかと思います。』
『おうちがいいなぁ~という安心感が毎日の暮らしの中に根付いていることが、
何よりだと思うのです。』
映画の中の言葉が私の胸にささります。
映画のコメントの中で、コミュニティデザイナーの山崎亮さんが、
『こういう晩年を過ごすために、自分はいま何をすべきか。
本作を観てからずっとそのことを考えている。』と言っていたり、
建築家の藤田雄介さんが、
『憧れの対象ではなく、未来へのヒントに溢れています。』と指摘していた通り、
単なるいい映画だったなぁ~で終わらせない、何かがあります。
それは、ご夫婦の
『次の時代が豊かになるようにつないでください。お金より人です。』
という強いメッセージのゆえかもしれません。
『私にとって一生に一度、生きている限り最善をつくす。』
『出来ることから、こつこつ、ゆっくり・・・』
『こつこつ、こつこつ一人でやる・・・』
自分の人生フルーツを、少しずつやっていけば、熟成させられるかしら・・・
ついせっかちに、こつこつ出来ず、ボタッとその実を落としてしまいそうです。(西野博子)