集いと円いを語る

昨日、新宿リビングデザインセンターOZONEにて開催された

「中村好文、皆川明 集いと円いを語る」へ参加してきました。

TOTO出版より5月に出版された作品集、

『中村好文 集いの建築、円いの空間』を記念しての企画です。

 

中村好文先生とは、

昨年のもくよう連主催での韓国旅行以来で、

お目にかかれるのを楽しみにしておりました。

 

気取らない、オープンな先生の魅力は、

旅行中に感じたそのままでしたが、

今回、テキスタイルデザイナーの皆川明氏との

トーク形式にしたことによって、

先生の魅力がさらに倍増したというか、

皆川さんも、独特の雰囲気を醸し出して、

お二人の会話の掛け合いが、とても面白く展開していました。

お酒を交わしながらの席でしたら、

あっという間に、朝になっていたでしょう。

 

最初の前半は、スライドを観ながら、

どういう過程を経て、完成は、このようなカタチになったとか、

なるほどなぁ~と思うことばかりでした。

 

特に施主でもある、皆川氏のお住まい、

休寛荘が出来上がるまでの1年間の過程は、

私たちが聞いているだけでも、楽しく感じられ、

完成されてしまうのを寂しく思い、

あえてまだ追加工事はないかと、探し、見回したという

お二人の気持ちがよくわかり、笑えました。

「ものづくり」のお二人ならではと思いました。

 

この休寛荘は、中村先生の師である吉村順三先生の設計で、

その改修工事を中村先生がすることになったわけで、

不思議な縁を感じたそうです。

 

休憩を挟んで後半は、

会場の聴衆者から頂いた質問に答えるという構成でした。

 

その一つに『五感の中で、何を一番に大切に思うか?』

という質問がありました。

集いと円いという連想から、

迷わず、味覚だろうと思いましたが、

答えは意外にも、触覚でした。

 

先生が手がけた階段の手摺は、

そこに住む施主に合わせて考えるそうです。

無骨な成人男性と、お歳を召されたご婦人とでは、

確かに握る感覚が違ってくるでしょう。

 

そして、木は自分の寿命を越えたものであり、

手触りというものは、何より、

記憶に残るとおっしゃっていました。

 

その言葉に、私も手のひらに残る数々の記憶が蘇り、

スゴイ!と納得した次第です。

 

それはまた皆川さんの仕事も同じことのようで、

お二人で海外旅行中、使い古びた列車の座席の手触りを、

皆川さんは走りよって確認していたらしく、

中村先生はその光景を、まるでお金でも見つけたごとくと、

可笑しく紹介していました。

先生曰く、まさに「ものづくりには境界線がない」というわけです。

設計を志す若者から、「一日のうちで何を大切に思うか?」という問いに、

「一番楽しいこと」と答えると同時に、

「一日一日をないがしろにしない・・・」とおっしゃっていたことがとても印象的でした。

 

その一日一日に、普段が、いつもが、あるわけで、

それこそが、暮らしの中に入っていくデザインを心がける、

著書の先生の紹介の中で、建築作品というより

××さんの家と書かれていた、所以なのかと思いました。

 

そして設計を志さないおばさんにとっても、この日の

「一番楽しいこと」になりました♪(西野博子)

今発売中のクロワッサンの表紙にもなっています(右上)

 

 

 

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