RCマンションはなぜ、暖かい?

団地やマンションなどの住戸は、多くの場合、下図のように、上下左右4面が隣戸に接し、2面のみが外気に面することになります。一般的に、アルミサッシ単層ガラスの開口部と天井・壁・床を外周部より1m程度断熱しただけの外皮性能は、UA値8.45W/㎡K(6地域の平成25年基準のUA値0.87)という恐ろしく悪い数値です。しかし、面で接する4戸だけでなく斜め左右上下の線で接する4戸からも影響を受け、隣戸が暖房すれば、暖められることになります(逆に隣戸を暖めていることにもなります)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隣戸との温度差が0℃の場合、外皮からの熱の損失がほとんどないことになります。このような温熱環境を戸建住宅で再現しようとすると、HEAT20のG2基準であるUA値0.46以上の性能が必要になります。さらに無断熱のRC躯体が巨大な蓄熱体として働くため、一日中ほぼ温度変化のない状態になります。戸建住宅では、朝の最も暖かくあってほしい時間帯に、どうしても一番寒くなってしまうのと対照的です。RCマンションから、木造戸建住宅住宅に住み替えをする場合には、UA値0.46以上の断熱性能にしないと「満足」できないというのが実情のようです。(小栗克巳)

参照・出典:松尾和也『エコハウス設計手法』第31回(新建ハウジング+ONE,pp62-65)