収納扉をなくすと--

近隣の伝統的民家の屋敷構えは、母屋に付属して納屋、蔵があるのが当たり前でした。「初代が家を建て、二代目が自前の井戸を掘り、三代目が蔵を建てる」といわれ、建設費が高かった蔵は、家財道具が揃って暮らしが落ち着く三代目が建設したようです。蔵の棚には、箱詰めされた物が季節や使用時期を考えて整然と並べてられていました。一目でわかるように物が目に訴えかけ、飛び込んでくるのです。


物が手易く入手できる昨今は、家を建設する前から物に囲まれています。子どもの成長とともに物がどんどん増えて、空いているスペースは全て収納スペースに変身。代表例が扉が付いた階段下スペースで、物を隠すように押し込むことになります。


スイスで伺った民家でも階段下を収納スペースにしていましたが、扉はありませんでした。代わりにカーテンや暖簾をかけて中が丸見えにならないよう工夫がされ、物はすぐに位置がわかって取り出せるようにきちんと並べられていました。家も日本に比べて広いのですが、むやみに扉を設けない暮らしにヒントを感じました。


そこで、収納を覆い隠している扉を取り払う勇気を出してみてはいかがでしょうか。きっと気分転換になり、奇麗に整理が行き届いた物を見て楽しむことができると思います。