採暖と暖房

冬至が近づき、暖を手放せない時期になりました。今回は、「採暖」と「暖房」の違いを考えてみます。

寒い時、むかしは家の中でもかじかんだ手を囲炉裏や火鉢、ストーブにかざして暖を取ったものです。火に面した方は暖かく顔は火照りますが、背中は寒いまま。これが「採暖」です。

それではエアコンはどうでしょう。室温が上がり風に当たっていれば温かいのですが、背中は寒い。「採暖」とあまり変わりません。

さて「暖房」とは、「室内を暖めて温度を上げ、屋外の気温が低くても室内を快適な温度に保つこと」です。外気温の変化には大きな影響を受けません。それではなぜ「暖房」で賄える家になっていないのか。その理由は家の性能の違いにあり、「採暖」でしか成り立たない家は、断熱と気密の性能が足りないのです。

国は、2020年までにすべての新築住宅を対象に新省エネ基準への適合を義務付け(※)ました。ようやく暖房が可能な家になりそうですが、まだエネルギー負荷が大きく省エネまで至らないレベルでしょう。このままでは、家全体を暖房するとエネルギー消費量が「採暖」より大きくなるので、暖める部屋と暖めない部屋が生まれます。その室内の温度差が「結露」「ヒートショック」の原因に。「暖房」ができる家が、標準でなくてはいけません。

MY TOWN 2015.12月号より。
※新築住宅次世代省エネ基準適合の2020年義務化は国土交通省により延期されました(2019年12月現在)