分棟配置の二世帯住宅・かきのねvol.37より再掲

2019年竣工の敷地をシェアするふたつの木の家です。完成して約半年後に取材した様子です。今月(2024年)5月18日(土)開催の家づくりセミナー「心地よく過ごせる二世帯住宅のつくり方」に合わせて再編集&再掲載です。ちょっと珍しい分棟配置による二世帯住宅の暮らしをレポートしています。

街に潤いを与える「木の家」をイメージ

「公園に遊びに来る子供たちに、”木の家のそばの公園“   と言ってもらえるような雰囲気になれば」
地元に生まれ育った姉妹は、馴染みのある街に潤いを与える家の佇まいを求めていました。鈴木工務店の建てる木の家は、そうしたイメージと重なったようです。

大銀杏で近隣住人に親しまれている公園。その向かいの約60坪の変形角地に、姉妹夫婦の家はあります。不整形な敷地やコスト面から、当初は1棟の完全分離型二世帯住宅を考えていましたが、敷地の余白をシェアするコンパクトな2棟配置のプラン提案を受けて、想定とは異なる集住のかたちを「おもしろい」と感じたそうです。休日も趣味も異なる二世帯にとって、2棟配置は結果的に暮らしやすいものとなりました。 

外構の統一感と暮らしの個性を両立

変形の五角形に近い敷地の角を起点に各棟へのアプローチが続きます。交差点に面した敷地奥が姉夫婦のK邸、手前が妹夫婦のT邸です。2棟は並行ではなく、敷地に沿って約45°開く角度で配置されています。そのため、間に三角形の共有庭が生まれ、隣接しながらも窓からの視線が交わらない利点を得ています。

また、それぞれの家から向かいの大銀杏を眺めたいという希望に沿って、リビングの窓やバルコニーの位置が決まりました。杉板張りの外壁や塀、庭については2棟で統一しつつ、プランや室内の仕上げには各世帯の個性が反映されています。

趣味を満喫するアクティブな姉夫婦の家

Kさんご夫婦は一緒に陶芸を習い、ご主人は自転車にも興じる趣味人です。そのため、延床面積65㎡のコンパクトな住まいに、暮らしと趣味の空間を融合させる家づくりとなりました。

なかでも特徴的なのは玄関の板土間です。3畳半程の広さで、奥のリビング・ダイニングにつながる自転車整備工房を兼ねています。そのため、玄関エリアは壁面収納や吊具を後付けしやすい構造用合板壁に。居室の仕上げは国産杉板三層パネルを多用し、木質感のある山荘のような雰囲気です。

また、外部アプローチとリビングをつなぐデッキは、近所に住むご両親や甥っ子が立ち寄るのにちょうどよい縁側のような存在になっているとか。ここで七輪を囲んで晩酌するのが至福の時だといいます。

やりたい事リストがいつも埋まっているKさんは、「まずは庭づくり。あとは、民芸ののれんや壁飾りなど、二人の好きな品をゆっくりと探すつもり。自分たちの陶芸作品と馴染む空間づくりを楽しみたいです」
シンプルな仕上げと上下階ワンルームという明快な空間を、Kさんの暮らしが彩っていきます。

インテリアと家時間を楽しむ妹夫婦の家

建築関係の仕事に就くTさんご夫婦は、プランからインテリアに至るまで家づくりのイメージを持っていました。リビングと上部吹抜けから見える大銀杏の眺めは、「希望していたとおり」で多忙な日々の疲れを癒してくれるといいます。白い壁と白木で仕上げた空間には、お二人の好きな北欧家具や照明が配され、あたたかみのある雰囲気に包まれていました。「私たちはインドア派なので休日は家で過ごすことが多いです。リビングのソファが定位置かな」と教えてくれました。

室内の温熱環境にも関心が高いTさん。床下とロフトに設置した2台のエアコンにより延床面積80㎡全館を冷暖房する仕組みで、初めての夏は比較的快適に過ごせたそう。「なるべく気流感なく過ごしたいので、冬の状況も見ながら、吹き抜けを介した暖気の回し方も工夫していきたいです」と話します。

取材日は夕方から親戚を招いてのホームパーティです。T邸に料理を持ち寄り会食した後は、K邸がBARになるのだそう。それぞれのライフスタイルを貫きながら、ほどよい距離感と集う暮らしを満喫している様子がうかがえました。

2024年5月のツアー&セミナーともにつくる家は18日(土)13:30~15:00開催です。テーマは「心地よく過ごせる二世帯住宅のつくり方」。今回紹介のK&T邸のほか、共有タイプや分離タイプの事例を参考に、二世帯住宅での心地よい距離感のつくり方や注意点を紹介します。詳細、お申込みはこちらhttps://www.suzuki-koumuten.co.jp/event/22545/からどうぞ。

KAKI NO TANE vol.37 「暮らしのスタイル」よりバックナンバー