徒然とおる『点検・修理と家への愛着心』

車の定期点検のように、家も年数ごとに点検を行います。無垢の木の家は、3年位まで目に見えて動きがあります。もっとも何十年と経った木でも生きていると思い知らされます。工場でのプレカット加工が始まった頃から人工乾燥材が主流になってきましたが、当時の構造材の含水率は20~25%程度。木材の性質を大きく変える「繊維飽和点」は約30%ですから、まだ大きな狂いが生じていたと言えます。日本における平衡含水率は屋内使用で12%と言われますが、エアコンの効いた部屋ではこれでも狂いが生じます。1年以内に発生する現象としては、部屋入隅の仕上げの壁が肌分かれや、下地の継ぎ目に沿った割れの発生があります。構造材や木の下地材が乾燥で縮み、狂いが出た結果です。家が壊れたのではと心配されますが、自然素材を多用するほど発生する現象です。

紀州の材木店HPより。山町商店の林場。鈴木工務店の家づくりでも採用しています


建築学会賞を受賞した名護市庁舎を訪問しました。雁行する格子状の剥き出しコンクリート屋根や、回廊に囲まれた居室。威厳あるこの建築もすでに築35年(2016年コラム執筆当時)。改修工事では竣工時と違う色合いや仕上げ材が使われていますが、元の素材で元に戻す努力が市民の建物に対する愛着心を育み、使い続けることを誇りに思うようになるのではと思いました。(気になる方は名護市庁舎で検索してみてください)


家も定期点検を行うことにより修理が発生しますが、これを怠ると後に想定以上の出費となり、家への思い入れも薄れていくことになります。(MY TOWN 掲載コラムより)