自然農とくらし

鈴木工務店のお客様には、自然、農、食といった、いのちとくらしを支える環境に関心の高い方がたくさんいらっしゃいます。いま、工事が進んでいる玉川学園の家のMさんもそのお一人。今日は、Mさんの大事にしている「自然農法」の考え方と、その実践の場となる家づくりの現場をご紹介します。

自然農法を学んだMさんは、家づくりの際に農とくらしが結びつく環境を求めました。M邸の敷地は南向きの段差地で、北側の上段に家を、南の下段に畑をつくる計画です。現場が進むかたわらでMさんもご自身の畑づくりを始められました。まだ雑草の残る更地の状態に見えますが、耕さない自然農法は他の動植物との共生で、豊かな土といのちの循環をはぐくむそうです。そのため、草一本生えていない土の畝が続く、ある意味見慣れた畑とは、芽が出た後も様相が違って見えてくるはずです。

さて、ここからは、自然農法を実践するMさんのコメントです。

敷地下段で畑づくりを開始したMさん。自生の草も残しつつ、刈り取った雑草は土づくりに生かします

個人的に大切だと思うのは以下の三点です。

 

1.命の循環

雑草は抜いてごみに捨てる、うんちは下水道に流す、等々、現代社会では、命の循環がなされず、邪魔なものは排除されて、ゴミとして処理されます。

しかし、本来は命は循環しているものです。抜いた雑草を畑に戻せば、それが微生物のえさになって、微生物が増え、微生物で豊かになった土壌は、新たな植物の生を育みます。

その植物の生をいただく人間も、出てきたうんちを畑に戻して肥やしにすれば、またそれが微生物のえさになって・・・(以下同様)、・・・というように、全ては循環していきます。

少し哲学的になりますが、私たちは普段、一方向的な時間を生きています。過去から未来へと続く不可逆的な時間です。

この時間的生においては、うんちは下水道に流したら二度と自分のもとには戻ってこないし、人間も生まれて成長して老いて死んだらおしまいです。

しかし、本来命は循環するもので、その循環は絶え間なく続きます。そこでは、時間が一方向的ではなく、円環的になります。円環的な時間とは、つまり永遠ということです。

円環的な時間の一部を切り取ってそこだけ眺めれば、一方向的な時間に見えますが、全体を眺めれば、あらゆる命が絶えず循環する永遠の中に生きています。

自然農をすることで、その永遠なる命・生に参与することができる、というかむしろ、本当は誰しも参与しているのですが、現代社会における私たちの生き方がそれを覆い隠しています。

その覆いを取るための手段として自然農は有効ではないかと考えます。

 

2.耕さない

耕さないことはあくまでも命の循環を成立させるための手段にすぎません。土の表層部と下層部には、異なる種類の微生物が生息しており、表層部の微生物は刈られた雑草を

餌として好み、下層部の微生物は朽ちた植物の根を餌として好みます。それぞれ棲み分けがなされているので、彼らの居住環境をかき回してしまうと、一気に微生物が死滅します。

それを避けるために耕すことはしません。それにもかかわらず、土は微生物の働きによって徐々に団粒構造が作られ、柔らかくなり、人為的な耕起以上の結果をもたらします。

 

3.共生

雑草一本生えていない畑を理想だと考える人たちは、雑草だらけのまるで畑に見えない自然農の畑を、害虫の発生する場所としてとても嫌がります。しかし、いわゆる普通の畑は、

生物の多様性がないからこそ、害虫が大量発生してしまうのであって、本来の自然であれば、その害虫を食べる虫が周りにいるはずなので、害虫だけが大量発生することはありません。

自然農の畑は、生物の多様性を確保することで、害虫による被害を最小限にとどめます。そもそも害虫とは、人間が作物を作る上で邪魔になるという観点から言われているにすぎず、

それ自体で害虫であるような虫はいません。生物の多様性が確保されることによって、量的バランスが取れているところでは、ただ共生があるだけで、排除すべきものはありません。

そのような共生の場を作り出すのも自然農の魅力の一つかと思います。(Mさん)

敷地の上段では現場が進行中(3月の様子)

 

なるほど、農はいのちとくらしと深く結びついているのだなぁと改めて知ることができます。また、私の場合は、自分の普段の生活が土から離れ、エネルギーの循環を感じることもあまりなく、どちらかというとデジタルな情報の海をあてどなく漂っているように感じられるのでした、、、

大量生産の職業農では難しい課題もあるのでしょうが、自家菜園で実践するなら「循環と共生」を感じられる自然農法に挑戦したい!(うちは狭いから畑地を借りるところからはじめなくては、、、)

Mさんの家の現場blogはこちらから。
「新築工事が進んでいます。玉川学園にて、建て方の現場から」
「玉川学園の家、新築工事始まっています」

夏には完成見学会を開催する予定です。 (畑野)