可喜くらし2020・第1回レポート『IRO OTO MIDORI 岡上からはじまる“ものがたり”のあるツチづくり』

2020年6月20日(土)に開催した可喜くらし2020第1回『IRO OTO MIDORI 岡上からはじまる“ものがたり”のあるツチづくり』のレポートをお届けします。

6年目を迎える可喜くらしは、今期から、地域で活動する方々とタイアップし、くらしを取りまく様々な事柄をテーマに全4回で進めていきます。

1回目は、田園風景が残る岡上エリアで「農あるくらし」のネットワークを構築しているユニット

IRO OTO MIDORI の宮田良亮さんと山口哲史さんに登場いただきました。

IROOTOMIDORIの宮田さん(左)と山口さん(右)。築150余年の茅葺きの古民家「可喜庵」にて

以前は市外に住んでいたお二人。小田急線の鶴川駅から徒歩圏内に豊かな緑が残る稀有な環境、岡上に魅かれて移住したそうです。ユニット結成から約3年、岡上の畑を起点に、地域の農家さんや作家、デザイナ―、緑地を守るNPOの仲間たちとの縁を広げて、岡上の魅力や持続可能なくらしの豊かさを掘り起こし、発信しています。

はじめに、二人の活動のものがたりをお話しくださいました。宮田さんはもともとライブサウンドエンジニアとしてライブハウスやクラブで音楽活動を支える仕事を専門としてきました。2011年の大震災をきっかけに、ライフスタイルや豊かさへの考え方が変わり、単身インドへ旅立ちます。詳しい内容は、IROOTOMIDORIのHPに委ねるとして、その後に岡上へ移住。農ある暮らしを学びながら「土づくり」に励んでいます。

山口さんは、もと料理人。飲食チェーンでの「経済活動のための料理」を供する毎日に、いつしか喜びを感じなくなっていったそうです。そんななか、インドから帰国した宮田さんと出会い、岡上の野菜や土づくりにも共感を覚え、「旬のものをいただくことは大事なことだと改めて実感。生き方自体が変わった」といいます。そして、IROOTOMIDORIのフードディレクターとして合流することになりました。

土づくりを通してくらしの豊かさを探求する

宮田さんの農の師匠、三澤さん(左)です。右の女性は物販や試食のセッティングを手伝ってくれたIROOTOMIDORIの仲間のようこさん

宮田さんが師匠と呼ぶ農の先生がいます。三澤さんです。今回の可喜くらしにもご参加いただきました。仙人のようなたたずまいですが、もとはサラリーマン。何事も突き詰める質だそうで、土づくりに邁進し、今では農の指導やワークショップでの講演なども行っています。三澤さんはじめ、宮田さんたちが取り組む土づくりは微生物の力を引き出すものです。小さな彼ら(微生物)の活躍で、無施肥、無農薬で野菜が育ちます。除草剤などで雑草を根こそぎ取って、土がきれいに露出した畝とは対照的です。一見すると、モシャっとした畑です。

岡上の畑です。NPO法人かわさき自然と共生の会、通称「ともいき」の仲間との活動拠点です

「過度なえぐみや甘みはないんですよ」と山口さん。よく、普通の野菜根菜(葉物、じゃがいもなどなど)を口にしてあまい!と感じることがあるかと思いますが、油粕などで富栄養化した作物の特徴なのだそう。言うなればメタボ野菜ですね(品種としてあまいものもありますが)。また、「“虫が食べる野菜は美味しい証”はウソ」とのこと・・・都市伝説ならぬ畑伝説ですね。土から元気なら、病気や害虫はつけ入るスキがないそうです。健康な身体と一緒です。微生物が元気な土からはじまる食と健康、豊かなくらしの扉が少し開けた瞬間でした。

やさしい味って、本当にあるんだ!

待ってました!岡上野菜の試食です。じゃがいもとジャンボにんにく。蒸しただけのシンプル調理で、素材の味をいただきます

岡上のじゃがいも、じゃがいも、ジャンボにんにくを蒸しただけのシンプル調理で試食する時間も設けました。「あれ!?パンチは効いてないけどジワジワくる!!」といった感覚です。歯ごたえも、じゃがいもは少々さっくり感が残る程度の蒸し加減で、みずみずしさの残る新食感です。ジャンボにんにくは、臭みが少なくほのかな辛みで塩や特製味噌をつけていただきます。百聞は一見にしかず、ならぬ百聞は一食にしかず!です。

「共働きで忙しい世帯も多いと思いますが、家族のために日常から手の込んだ料理を作る必要はないし、かといって冷食に頼る必要もないですよ。シンプル調理で素材の味を感じられれば、栄養も幸せも得られることが伝われば」と山口さん。時短家事がもてはやされる昨今ですが、土からはじまる豊かなくらしの扉が、またさらに開けました。

ちなみに、IROOTOMIDORIではGyow-Showとしてとれたて野菜販売をイベント等で出店したり、通販で届けたりしています。

ジャンボにんにく。隣のキャベツと大きさ比べてみて!

ラオスのお茶、農の学び。さらに広がる活動と人とのつながり

Gyow-Show(行商)のテーブルセット。右側に、現在宮田さんが現地で協働しているラオスのお茶が並びます。左には岡上野菜を並べます

IROOTOMIDORIの活動の今後について話は続きます。岡上の畑では、隣接する緑地の保全も含めてNPO法人かわさき自然と共生の会(ともいき)の仲間と一緒に活動しています。そしていま、宮田さんは、自分たちの畑を展開するために農学校サスティナブル・アグリカルチャー・スクールiCas(いかす)で学びを深めています。

さらに、縁あって巡り合ったラオスの茶畑とそのオーナーとの協働も始動。味はもちろん、製法や販路の可能性を形にしながらも、ラオスの豊かな自然やライフスタイルを生かす支援を模索中です。

豊かなくらしとは?を考えるきっかけに

IROOTOMIDORIの活動とものがたり、目指していることを、聞いて、食して、意見を交わして。くらしの豊かさってなんだろう、と考えるきっかけにしていただけたらうれしいです。

今回の参加者は、新型コロナウィルス感染拡大防止対策から、これまでの可喜くらしの定員の半分に限らせていただきました。岡上に暮らす人、すでにIROOTOMIDORIの活動に参加している人、可喜庵に来てみたかった人、鈴木工務店のお施主様など十数名の方々です。

町田、鶴川近郊や岡上エリアに住んでいたり、やはり岡上に移住してきたりする人もいらっしゃいました。フリートークでは、土づくりのちょっとマニアックな話を一生懸命に訊ねる人の姿もあり、くらしのなかの農に興味を抱く参加者同士の交流が見られました。

岡上、鶴川エリアの半分田舎、半分都市のような不思議な立ち位置(地理的にも、文化的にも)が独特の磁場をつくっているのかも?専業農家さんとはちょっと違う視点をもった半農半サラ的な生き方も、ここでなら成立するかもしれませんね。また、そうした軽やかな生き方を模索する人たちが、昔からの農家さんや住人とも柔軟につながり地域の活性化に一役かっている様子もうかがい知ることが出来ました。

次回は実践編!?

IROOTOMIDORIの秋の野菜を試食しながら、「“ツチづくり”からはじまるくらしのなかの農」の実践編を紹介する第2弾を計画中です。詳しくは、鈴木工務店HPやblog、IROOTOMIDORIのHPでも発信していく予定です。おたのしみに!

※可喜くらし2020第1回は、6月20日(土)に開催しました。新型コロナウィルス感染拡大防止の緊急事態宣言解除後、参加定員を50%減とし、室内の換気、手指の消毒を実施。また、農作物の試食については、保健所の指導に基づいて行いました
※秋の実践編は、今後の状況により開催が変更となる場合がございます