少し時間が経ってしまいましたが、9月5日(土)に開催した可喜くらし2020第2回のレポートをお届けします。
『映画でシェアするまちとくらし~小さな活動の広がりを体感しよう』
地域でNPO活動や支援を行う地域創発プロデューサーの清原理さんが登場
今回のオーガナイザーである清原理さんは、町田市中町(町田駅東口から徒歩10分)のコミュニティカフェ「双方形」のオーナーでもあり、鶴川ショートムービーコンテストの実行委員長ほか数々のNPO活動を通じて地域での生活や課題、クリエイティビティをサポートする地域創発プロデューサーです。
活動に通底する思想「創発」について
講演中にも語られましたが(blog掲載のスライド参照)、「創発」とはもともとは物理学や生物学で用いられる複雑系の用語とのこと。「1+1=2」ではなく「1+1=10」になるような現象で、与条件や個人のアイデアを組み合わせて、予期せぬ出来事を含む発展的なシステムや創造的な成果を生み出す作用を指すそうです。
地域の人や活動のつながりがNPO活動の源泉であり創発を促すもの。「NPOの活動は物売りではないからね。何かをする人、動く人が大事。地域に住んでいる人だけじゃなくて、やって来る人、移住する人。みな、地域の課題でつながっている」と清原さんは話します。
これまで携わってきた活動から、現在進行形のプロジェクトまでを紹介。
清原が師匠と仰ぐ市民参加事業プロデューサー、故・小川巧記氏と共に手掛けた「開国博Y150」や、3.11を機に発足した「まちだから元気をプロジェクト」、地方で取り組んだ人材開発「日之影町・ヒノカフェ」、地域での“場”づくりをテーマに活動する「トランジションタウンまちだ・さがみ」(創立メンバー)、「まちだ自然エネルギー協議会(NPO法人)」と「町田市民電力(株式会社)」での取り組みなどなど。2015年から続いている「鶴川ショートムービーコンテスト」は、今年はコロナ禍で作品の制作がままならない中、企画案のコンテストを授賞式も含めてオンラインで行うとのこと。鶴川の枠を飛び出し、2019年は全国から92作品の応募があったそうです。受賞者同士がつながりその後一緒に作品をつくったり、中には結婚する人も出るなど、予想外の展開を見せています。まさに創発?
豊富な実績とともに、活動の目的やその効果などをお話しくださいました。
地域活動のベースとなるリアルな“場”を運営。その名も「双方形」。
現在の主要な活動として、町田駅から徒歩8分ほどにある飲食可能なレンタルスペース+コミュニティcafe&BAR「双方形」の運営があります。地域活動の拠点や「自立をサポートする共生の場」として、あらゆる活動の芽を育む環境をつくり続けています。実際に、NPOや市民活動を始めたいという方の相談にも乗ってくれますので、ご興味のある方はcafeやbarの利用にあわせて清原さんと交流してみては。
市民、地域活動を考える上で大切なキーワード
「コミュニティとは」「創発とは」「公共とは」「居場所とは」についても解説。私たちのような工務店からすると、建築的には公共=物理的なまちづくりだったり、居場所=家や家族、と限定してとらえがちですが、公共の“担い手”としてとらえると、国家・自治体/官のほか、NPO・市民団体/民、それぞれの姿が見えてきます。
お話しのなかから少し紹介しますと--
従来の官による利益再配分型(法と税)でカバーしきれない、複雑で多様化する課題を解決する民による「公」
地域や暮らしの課題解決の仕組みとして、民による「公共」の役割が増すことに触れています。そして、「公共」の役割は、キーワードのひとつである「居場所・場」との関係性につながります。箱モノをつくるような物理的な解決策とは別物で、居場所や場には誰と、どんなふうにといった関係性から生まれる課題への対応が求められます。LGBTや子供の貧困、現状の法制度で再配分から漏れてしまいがちな人やライフスタイルを受け入れる場としての居場所をつくれる可能性が、NPO活動にはあることに改めて気づかされます。
今回も定員を従来の約1/3に絞り、岡上野菜(第1回で講演のirootomidori山口さんによる)の試食も行いました。
高校生の参加もあり。質問コーナーでは、市民活動に見られるような自発的で横断的なネットワークに対して、学校社会の縦割りのヒエラルキーへの疑問や、コロナ禍で困窮する文化活動への支援のあり方などを議論する場面もあり、熱いトークとなりました。