少し時間が経ってしまいましたが、10月10日(土)に開催した可喜くらし2020第3回のレポートをお届けします。
柿生の家JINEN-DO(自立訓練事業所)の石田和之さんが登場
化粧品メーカー、経営コンサルティング会社勤務を経て、重度知的障害のある長男の誕生をきっかけにJINEN-DOを設立した石田さん。子どもの頃から自然が大好き。JINEN-DOの活動を通し、自分らしくあり、本当の自分を生きることの大切さを再認識し、今は「森(人と自然の豊かな生態系)を育む」という自分のミッションを生きることを大切にしているといいます。
今回は、柿生の家JINEN-DOの活動とともに、普段利用者さんとも行っている“自己理解”をテーマにお話しとワークを紹介していただきました。
柿生の家JINEN-DOってどんなところ?
柿生駅から徒歩約10分の立地にある自立訓練事業所です。日々の暮らしを丁寧につくりながら、本当に生きたい人生を歩めるように自分を見つめなおすプログラムを実践しています。掃除や運動、自己理解を深めるプログラムに加えて、庭や畑で野菜や果樹を育てています。JINEN-DOのある柿生の里山全体が訓練フィールドです。JINEN-DOは自然堂と書きます。名前の由来は「自ら(みずから)・・・自分から」と「自ずから(おのずから)・・・自然に」。ちなみに、JINEN-DOは、鈴木工務店が建てた築40年の民家を再利用しています。
“暮らす”と“働く”の再統合
石田さんからは、はじめにJINEN-DOの「これまでのあゆみ」が紹介されました。開業は2012年。開業以来行ってきた企業への就労移行支援から、自分が本当に生きたい人生を歩めるように“自分育て”を行う自立訓練事業所として、2019年に再スタートしています。
開業時から一貫して“暮らす”と“働く”のバランスを見つめ続けてきたなかで、“暮らす”と“働く”の再統合(ライフ&ワークスタイルの見直し)の必要性を見出し、実践するサポートをしています。ここでそもそも--「ライフ&ワークスタイル」という言葉よりも「ワーク・ライフ・バランス」という言葉のほうが刷り込まれている自分に気が付くわけです(広報・畑野が、、、)。
ご存じワーク・ライフ・バランスは、仕事とそれ以外の時間を切り分けて考え、どのような割合でどうバランスさせるかを意味するのですが、石田さんのライフ&ワークスタイルは違います。下のスライドが一目瞭然ですね。
ライフもワークも、相互に関係していて片方が崩れればもう片方が影響を受けるはずなのに、別物と見立てて無理を強いてきた結果、身の回りのことがおぼつかなくなるほど自立的な生活ができなくなってしまうケースがあることを、石田さんのお話しで改めて認識することができました。こうした状況、環境を「不健全な社会」としてスライドでは図式化しています。
安心安全な環境で“本当の自分”を育む
では、どのような環境(健全な社会)で“本当の自分”を、生きやすいと思える人生を育むことができるのか。JINEN-DOでは、個人の暮らしにとどまらず、広く環境を“整える”ことにも励んでいます。環境とは柿生の地に残る里山風景と豊かな自然も意味しますし、市域の人とのつながりも含まれます。
具体的には、JINEN-DOで、庭づくりや畑、近隣の竹林整備などの活動を通して地域の社会、住人の方々とのつながりをつくっている活動の様子も紹介されました。石田さんの頭の中には、JINEN-DO一体の山が人も自然も豊かな里山となるイメージがはっきりと立ち表れているようです。
ドライバー・セルフチェックに挑戦
ワークでは、普段事業所でも使用している「ドライバー・セルフチェック」の簡易版に挑戦しました。ドライバーとは「駆り立てるもの」と訳されていて、「こうしなければいけない」「こうすべきだ」と脅迫観念のように自分を駆り立てるものを指します。チェックシートに記載のある行動のなかで、自分の普段の行動に当てはまるものをチェックして数値化し、ドライバーを可視化していきます。
ワークでは可視化まででしたが、訓練ではそのドライバーの代わりに「~してもいいですよ」と自分に許可を与え、気持ちと行動を自由にするサポートをしていきます。
今回の可喜くらしでは、自立訓練を実践された利用者さんも登場してくださいました。体験談から、柿生の家JINEN-DOの皆さんと一緒に、徐々に、でも確実に、心の余裕を取り戻していく実感を得ていらっしゃる様子をうかがい知ることが出来ました。
Be the change that you want to see in the world
最後に、“本当の自分”を体現して生きるための格言として、ガンジーの言葉が紹介されました。
「あなたが見たいと思う世界の変化そのものに、あなた自身がなりなさい」
柿生の家JINEN-DOでは、
「自分の内面、そして、足元の暮らしから自分が生きたい世界を表現していく」
今回の可喜くらしは、一生活者として、誰の心にも響くお話しとワークだったと思います。日常に忙殺されて、気づけば生活リズムも物理的な住まいも乱れていた、ということは、自分自身よくあります(畑野が)・・・。日常生活への不安や悩みに気づければ、JINEN-DOのような場所を訪ねることもできますよね。今回のblogを読んで気になった方は、直接、JINEN-DOへ問い合わせてみてくださいね。「柿生の家」で検索できます。
コロナ禍の2020年度、そして緊急事態宣言再発出中の2021初春現在も、定員を大幅に縮小しての開催を余儀なくされていますが、こうしたアーカイブや、次回以降は動画などでシェアできるように進めていく計画です。おたのしみに!
★次回、可喜くらし2020(-2021)第4回は3/6(土)開催予定です。緊急事態宣言延長につき、開催方法に変更が生じる可能性がありますが、詳細はイベントページにアップしていますので、ぜひチェックしてみてください。次回のテーマは『『建築家と考える鶴川の楽しみ方-建築と暮らしが街を変えていく-』/鶴川days・吉岡俊知です。鶴川で活動する建築家として、アーツ&クラフツ建築研究所の杉浦伝宗さんやデザインライフ設計室の青木律典さん、鈴木工務店代表の鈴木亨も登場しますよ。イベントページはこちらからどうぞ。 (畑野)