工務店の注文住宅 完成見学会で見るべき7つのポイント

4月上旬に開催した建物完成見学会「のびのび 手をつなぐ」を例に、工務店の注文住宅・完成見学会で見るべき7つのポイントをお伝えします。

町田市根岸の見学会住宅「のびのび 手をつなぐ」の2階LDK。勾配天井の下のワンルーム状の空間には小上がりの畳間もあります

1)注文住宅の主人公--すまい手のものがたりをイメージする

見学会では、住まい手の要望をどのように住まいへ反映したかを、案内図面や掲示パネル等でも解説していますので、一邸ずつ異なる家と住まい手のものがたりを念頭にご見学ください。そのうえで、ご自身の暮らしのイメージがどのように形になるか、気になるところは会場の設計者や現場監督にどんどん質問してみてください。

・住まいの設計レポートをチェックしてみよう

今回写真で紹介している見学会住宅(町田市根岸)の住まい手は、子育て世代の4人家族です。ご家族の要望や敷地条件を紹介している設計レポートは鈴木工務店HP内のイベントサイト 各見学会案内に掲載しています。これから開催する見学会の設計レポートも、事前にチェックしておくとより暮らしのイメージがつかみやすくなります。

どのような見学会でも、必ずその家、その家族のものがたりを紹介しています。十人十色の注文住宅を見て「これはいいな!」と思うところもあれば、「これは自分のライフスタイルには合わないかな」というところがあるのは当然です。

たとえば、町田市根岸の見学会住宅のような子育て期の住まいだと、子供部屋のつくり方にも住まい手それぞれの考えが色濃く反映されています。希望を叶えてくれそうなつくり手かどうかを、空間体験と設計者への質問とその答えとを合わせて、判断していく機会にしてください。

町田市根岸の見学会住宅「のびのび 手をつなぐ」。1階子供室。将来は2部屋に仕切れるように出入口を2カ所儲けています

・間取り図を片手に動線計画を確認したり、住んでみた様子を想像してみる

見学会場では概要が記載されている間取り図を手渡されます。なんとなく眺めるだけではなく、実際にその家に住んでいるようなイメージで家の中を移動してみてください。動線や収納計画、朝の身支度、家事、家族のだんらんなどなど。いいなと思ったポイントがあればメモを取るなどして記憶しておくと、自身の家づくりの参考に役立てられるはずです。逆に、「おや?」と思うことがあれば、設計者や監督に質問してみましょう。大抵は、住まい手独自の習慣などを反映した結果=固有解なのであまり気にする必要はないかもしれません。

・住宅設備の選択は参考程度に

「見学会のチェックポイント」等で検索すると、多くの解説記事が出てきます。わりと多いのが、キッチンやお風呂の大きさ、配置、動線計画などのようです。一方で、そうした住宅設備はショールームでも確認できます。また、使い勝手や好みは住まい手それぞれですので、注文住宅の見学会では住宅設備の選択等はあくまで参考程度です。

実際、鈴木工務店の住宅では、メーカーのシステムキッチンの方もいれば、大工や家具屋が手掛ける木の造作キッチンもあります。広さや大きさも、ご夫婦二人で料理を楽しむ方、ご主人がメイン、小柄な奥様に合わせたカウンター高さ、などなど--それぞれの使い勝手に合わせた提案をしています。

町田市根岸の見学会住宅「のびのび 手をつなぐ」。キッチンカウンターにダイニングテーブルを組み合わせた造作キッチン。カウンタートップを窓の高さを合わせて空間を構成する要素を整理して見せています

2)“過ごし方”から考えた天井高さを体感する。2階リビング・町田市根岸の見学会住宅の場合

平面図上で動線や広さ、間取りを確認し、現場で体感するのは案外分かりやすいものです。でも、図面では感じ取れない高さに関する断面的な空間の広がりは、実際の建物を訪れるからこそ実感できるものです。

・その場所でどう過ごすのかを考えた設計提案かどうか

見学の際には、その空間でどのように過ごすのかを考えてみてください。吹抜けでは、視線を上げれば2階の採光窓から空が見えることも。ソファスペースやダイニングエリア、畳では座って過ごすため視線が低くなります。実際に座るなど、その場所で長く時間を過ごす動作なり体制をなりをとって、居心地を確認してみてください。寝て過ごす寝室や、座っている時間の長いダイニングなどは、あえて天井高さを抑えたり窓を絞っていることも多いです。

町田市根岸の見学会住宅は、台地の端部という立地環境を生かして2階リビングを採用しています。勾配天井の下にワンルーム状のLDKが拡がるため、縦横に解放感を得ています。

また、鈴木工務店では一様に高い天井の空間等は提案していません。その場所でどう過ごすかを考えて天井高さを提案しています。吹抜けとそれに隣り合う空間の天井高さの違いにメリハリを感じられるプランも多いです。

3)窓からの眺め・視線の抜けを確認する

敷地の特徴を最大限活用する手段の一つに窓の計画があります。どんなに隣家が迫る住宅街でも、視線の抜ける場所はあります。敷地と周辺環境を読み解き、視線の抜ける場所を見つけ出してプランに反映しているか否かは、見学会なら一目瞭然です。

町田市根岸の見学会住宅「のびのび 手をつなぐ」。2階リビングからは近景に実家の母屋を、中継に街並みを、遠景に丹沢山系を望みます

・床座、椅子、立ち姿勢で変わる視線の高さが考えられているか

また、「どこからどう見た」視線の抜けや景色なのかにも想像力を働かせてみてください。2)の天井高さに関する断面的な空間体験でも述べたように、その場所でどう過ごすかによって見え方が違ってくるからです。たとえば、畳の間なら床座なので、視線はグッと低くなります。一方、移動空間では立っている高さで見える景色を考えます。

周囲からの視線が気になるからと、外周をぐるりと高い塀で囲ってしまうのは、視線や風の抜け、防犯の面でもデメリットが大きく、何より閉塞感が生じてしまいますよね。その場所での過ごし方を念頭に、視線の抜けを考えているか、視線のコントロールと解放感や採光・通風といったメリットを両立する窓計画かを、会場で実際に確認してみてください。

町田市根岸の見学会住宅は、2階リビングの連窓窓から、遠く丹沢山系を見渡すことができます。ワンルーム状のLDKプラス小上がりの畳間があるので、それぞれの場所で椅子に座ったり、床座にしたりしながら窓からの眺めを堪能できます。

4)空気質、温熱環境を体感する

建物に入ったときに感じる香りや空気質は大事な体感要素です。これも図面や写真では確認できない内容ですね。コロナ禍では、常時マスクを着用し、見学会会場も夏冬問わず窓を換気用に開けていますので、なかなか正確なところが分からない部分もありますが、できる範囲で確認しておきましょう。

・気密・断熱・換気が大事

しっかり気密、断熱、そして換気が計画されている建物だと、蒸し暑い季節あるいは寒い時でもエアコン1台(または2台)で家全体を快適な環境に保てます。室内の空気の温度だけではなく壁、天井、床の温度も測れるとよいでしょう。気密と断熱が確保されていると、建物自体も温度差が少なく保たれているはずです。(厳密には、床下土間コンクリートを蓄熱層に利用する床下暖房の場合は、見学会開催時の短時間では暖まり切らないので、本来の性能は住み始めてから感じられます)。逆に、温度差が大きい場合は要注意です。

また、OMソーラー(OMX)の家では、常に空気が循環し換気量も大きいことから、室内の空気は新鮮で、住み始めてからも生活臭が気にならないようです。要は、ダクト式エアコンでも、OMでも、家中の空気が動くように設計されていることが重要です。吹抜けや換気扇の配置計画等で計算通りに動いていれば、自ずと臭気や結露の心配は少なくなるはずです。そうした計画換気の実現は、住宅の気密性能が確保されていることが前提となります。

町田市根岸の見学会住宅は、ダクト式エアコン1台で家全体を冷暖房。住宅性性能はHEAT20 G2レベルを確保しています。

5)音と生活習慣を照らし合わせて考える

気密断熱性能がよくなると、遮音性も高まる一方、室内の音も逃げにくくなります。音についても図面や写真だけでは理解しにくいので、実際の空間体験が大事になってきます。

・自然素材の組み合わせで反響音を低減

鈴木工務店では、柱や梁を現しにしたり、壁や天井もクロスやペイント仕上げだけではなく一部に木板を貼って仕上げたりと、素材や僅かでも凹凸の感じられる内装仕上げを施しています。メーカー住宅などに多く見られるボードと白いクロスで構造材もすべてくるむ内装に比べると、音の反響は少ないと思われます。でも、やはり反響はします。また、空気の循環を促す吹抜けを設けることが多いのですが、これが上下階の音の通路になります。

見学会では手をたたいたり他の人の話し声に耳を傾けてみたりして、自身の音の反響の許容範囲を知る機会に役立ててみてください。居住前の見学会場では家具やカーテンなど音を吸収、分散させてくれるインテリアが少ないので、なおさら反響して聞こえますが、それを加味したうえで音に意識を向けてみてください。家族だけなら生活音の行き来も気にならないかもしれませんが、二世帯住宅などは生活リズムが違うので音に配慮した家づくりが求められます。

2018年竣工の相原の住宅より。吹抜けに面した壁面いっぱいの本棚や、天井の木毛版と押さえの木桟によって音が分散されます

・子どもの教育や生活習慣。音をきっかけに見直すことも

「子供の受験期は音に気を使う」とおっしゃる方も多いのですが、家族皆で配慮しながら生活するのも、お子さんが頑張っている期間限定措置と思って協力するのも、皆でできる対策ですよね。ドアの開け閉めも静かに行うなど、子どもの教育の一部に役立てるという考え方もあります。空間を開くか閉じるかは、ライフスタイルやひいては子育ての方針にまで大きく影響してきます。見学会では、住まい手のものがたりと、ご自身のものがたりとを照らし合わせながら音についても考えてみてください。

6)注文住宅のコアな楽しみ--空間の雰囲気を左右する照明計画をチェック

照明計画は大事な要素で、これも体感してみないとなかなか分かりません。鈴木工務店では、「灯りの島」という言い方で、照明を計画しています。

2018年竣工の広袴の住宅より。間接照明と、ダイニングを照らすペンダント照明のやわらかい灯りが、集いの空間をあたたかく落ち着いた雰囲気で包みます

・灯りの島と間接照明で場をつくる

鈴木工務店では、よくある天井直付けのシーリングライトで部屋全体を均質に照らすことは提案しません。集う場所、作業をする場所にピンポイントで照明を配置します。また、間接照明を多用して、壁や天井の“面”に光を当てることで、空間全体を柔らかく浮かび上がらせます。天井から下がるペンダントや壁付けのブラケット照明も、光源が直接目に入らない器具を提案します。

照明も「百聞は~」です。文字で読んでもよく分かりませんよね。会場で実際に確認してみてください。

・アンビエント照明とタスク照明を念頭に

間接照明を多用しているので、人によっては作業するには暗いと言う方もいます。もちろん作業する場所、デスク等にはスタンド照明などを設置することをおすすめしています。部屋全体を明るくすると、脳への刺激も強く、リラックスした状態になりにくいことが分かっています。会社やコンビニならともかく、自宅ではくつろいで過ごしたいですよね。灯りにはくつろぎや快適さが求められるので、照明計画について設計提案があると、家での暮らしがより豊かになるのではないでしょうか。

7)見えないものや細部に、工務店の設計施工力を見る

見学会場に入ったときに感じる「快適さ」の理由は何だと思いますか?あるいは、不快を感じればその理由も考えてみましょう。

・設計も施工も同等の理解度で家をつくる

空気質や温熱環境は、設計がシミュレーションして計画し、監督が理解したうえで施工をしてこそ「快適」が実現できます。その意味で、ポイント4で述べたように、両者を兼ね備える設計施工の工務店の家づくりを“空気質”からも感じることができます。

また、造作家具や建具や細部の納まりについても、設計と大工の加工場をもつ工務店の連携が表れるポイントです。住まい手の要望をどう形にしたか、デザイン性だけではなく、つくるうえでの無駄のなさや使い勝手が十分に考えられているかを確認してください。つくり手が提案する合理的な設計は、つくる手間や建築費の低減にもつながるため住まい手のメリットになっているのです。

・無垢材を中心とした素材使いの理由をたずねてみる

素材感、とくに木の使い方にも注目しましょう。床材一つとっても、やわらかい質感の杉やパイン系から、ウォールナットなど硬めの木材など、住まい手の要望に沿って提案しています。もちろん、それぞれのもつ特性、メリット・デメリットも見学会会場でお答えできます。

鈴木工務店では、サッシや壁紙、設備など、どれも設計と施工が納得して提案できるもので家をつくっています。そのため、ご質問に対しては設計も施工も同じような知見、態度、熱量で説明させていただきます。(ちなみに、ハウスメーカーさんのような営業マンによる接客対応はありません)

また、仕上げには最終的に目にも身体にも触れる部分なので、住む人の好みが色濃く反映される箇所ですが、暮らしの場には統一感も必要です。好きをそのまま取り入れてしまうと、まとまりのないバラバラな雰囲気になってしまいます。見学会会場では、素材使いと空間の統一感があるかを見ておきましょう。暮らしがはじまると家具や生活用品や入ってくることを考えると、デザイン面でも修繕面でも無垢材を用いたシンプルな仕上げにメリットがあります。

町田市根岸の見学会住宅「のびのび 手をつなぐ」。1階部分はモルタル仕上げ。2階は杉板の鎧張り。2階窓の花台がアクセントに。軒をしっかり出して外壁を風雨や紫外線から守ります。★5/7(土)8(日)に建物完成見学会「暮らしを紡ぐ」を開催します。詳しくはこちらからどうぞ。