木の家をつくる工務店がお届けする「知っておきたい無垢の木の特徴」

季刊誌『かきのたね』のバックナンバー(vol.44、2021年秋号)から。住まいのお手入れを紹介します。

築16年の家。経年で木が飴色に灼けて艶を増しています。 床材はクリ、柱梁はヒノキです。

本物の木の味わい

本物の木は時とともに表情を変えていきます。また、無垢の木は季節や湿度に影響されます。割れたり反ったり、時にはパシッと鳴ったり。無垢材の特徴を知り、暮らしに照らし合わせて適材適所に用いるのが、「木の家」を楽しむコツです。

住まいに活用したい無垢の木の特徴
その1 調湿効果

木は建材になっても呼吸(空気中の水分の吸収・放出)しています。無垢材のフローリングは梅雨時でも表面がさらりとした肌触りです。一方、木の表面をウレタン塗装などで覆ってしまうと呼吸ができず、空気中の水分が表面に留まりベタっとした感触に。鈴木工務店では、呼吸を妨げない浸透性の木蝋ワックスを使用しています。

その2 リラックス効果

木の香りや視覚効果で血圧が低下したり、唾液中のストレス指標物質が低下したりする研究結果(※1)があります。※効果の感じ方には個人差があります

その3 質感

木材は中空のパイプ状の組織が並列に配置されたハニカム構造をもちます。そのため、なんとなくやわらかく、ぬくもりのある手触りに感じられます。直接肌に触れる床や手すりなどに適しています。

2020年竣工時の住宅。まだ灼けが少なく新しい木の表情をしています。前掲の築16年の家の灼け具合の差を確認できます。床は安曇野マツ、天井は桧の上小節です。

その4 断熱性能

空隙をもつ構造のため熱伝導率が低く、結果として断熱効果をもたらします。塩ビなどの新建材に比べて、軟木のスギやヒノキなどのフローリングは冷たさを感じにくい一方、チークなどの堅木はやや冷たさを感じます。

気を付けたい無垢の木の特徴
その1 灼け

木は経年と共に灼け、色味が濃くなっていきます。ぜひ、竣工時からの変化と落ち着いた雰囲気になる様子を楽しんでください。日射の強い窓際と北側では灼けや乾燥具合に差が出ます。乾燥が気になる場合には、硬い塗膜をつくらない浸透性の自然系ワックスでケアしましょう。

その2 反り・目隙き

熱、乾燥により反りや目隙き(フローリングの板目が開く)が生じます。ストーブやファンヒーターを使用の際は、熱風が直接当たらないようにしましょう。ホットカーペットの使用は基本NGですが、どうしてもの場合は断熱マットを併用しましょう。また、水濡れも反りの原因になります。水をこぼしたらすぐに拭き取りを。水拭きの際は雑巾を固く絞ってください。

乾燥で隙間が生じたフローリング。

その3 割れ・欠け

節目に沿って小さな割れや欠けが生じる場合があります。無垢材の特徴なのですが、気になる場合にはDIYで補修も可能です。材のなかでもスギやパインは節が多いです。柔らかいため足触りは良いですが、物を落とすと傷もつきやすいです。見た目の好みだけではなく、樹種の特徴と暮らし方を照らし合わせて材を選ぶとよいでしょう。

 

その4 伸縮

木は空気中の水分を吸収・放出しているしてため、湿気の多い季節は膨らみ、乾燥する冬は縮みます。そのため冬は板の間が隙くことがあります。逆に、フローリングを強く貼り込み過ぎると湿気の多い時期に膨張し、突き上げや目割れを起こすことも。木の家は無垢材の動きの幅を見て施工しています。多少の伸縮はあるものと心得ましょう。

その5 鳴り

無垢材は伸縮による割れや摩擦で鳴ります。フローリングを踏むと板の接合部分(サネ)でキュッと鳴ったり、無垢材の柱梁も竣工から年単位でパンッと音を立てたりすることがあります。後者は経年と共に落ち着いてきます。呼吸する無垢木の特徴なので異常ではありません。本物の木の家の声として耳を傾けてあげてください。気になる場合には、フローリングの板同士の間にカッターなどで隙間をつくってあげる方法もあります。

無垢材に生じる干割れ(水分が抜け伸縮により生じる)は強度に影響を及ぼしません。※参考資料より

その6 節・色ムラ

自然素材は均質ではありません。小節、上小節、無節などグレード別に選択しても、色味、板目、節目など、板ごとに多少のムラは生じます。色味のムラは経年で灼けてくるので気にならなくなります。また、無垢材はヤニも出ます。

+「木の家のお手入れ」についてはこちらのblogをご覧ください

※掲載内容は無垢材の代表的な特徴で全てではありません
※1、ほか参考資料
林野庁『科学的データによる木材・木造建築物のQ&A』、ナイス(株)提供・無垢材施工要領書、『林産試だより』