寒すぎる家から卒業しよう--新築もリノベも断熱・気密・換気が大事。暖かい家で健康に

築20年の鉄骨プレファブのハウスメーカー住宅を断熱フルリノベーションしたK邸

急がれる脱炭素とエネルギー高の影響で、ようやく住宅性能ファーストの時代がやってくる?

大寒を過ぎ、少しずつ寒さが緩んできた?かと思いきや、2月は冬の台風ともいわれる爆弾低気圧の影響で太平洋側も雪になりました。夏の酷暑と冬の寒さをともなう日本の気候はそれなりに厳しいもの。一方で、家の性能は長らく低いままでした。

近年のエネルギー価格の高騰や脱炭素の必要に迫られて、ようやく近年は住宅性能向上へ家のつくり手も住まい手も意識が大きく向いてきた印象です。すでに、昨年からは住宅性能表示制度の見直しにより、一昨年まで断熱等性能等級は4等級が最上だったものが、段階的に7等級まで新設されました。それにともない、長期優良住宅の基準も等級4から5に引き上げられています(一次エネルギー消費量等級は6)。

呼応するように、年始からは新聞やTVでも「日本の家は寒すぎる」(朝日新聞)や「実は危ない!日本の“寒すぎる”住まい」(NHK・クローズアップ現代)、「寒い冬を乗り越える」(テレビ東京・ガイアの夜明け)など、住まいの暖かさと健康の関係について取り上げる特集が続いています。上記の記事によると、断熱改修を控えた住宅の約9割がWHO(世界保健機関)の推奨する室温18℃を満たしていなかったことが調査によって判明したといいます。

実際、弊社に建替えやリノベーションのご相談にいらっしゃるお客様も「家が寒い」とおっしゃいます。以前は、特にリノベーションですと、間取りの変更や設備の刷新を優先的に考える方が多かったのですが、今は断熱性能を同じように重視する、または認識する方が増えた印象です。

2022年竣工のOMX・蓄電池を搭載した平屋。すべての部屋がリビング・ダイニングにフラットにつながります。

採暖と暖房は違います。

昭和の家の冬といえば、背中に冷気を感じながらこたつで暖を採る(ついでにみかんも)、あるいは石油ストーブの前に陣取って顔をほてらせながらおもちを焼くとか。書いていて、かなり昭和な風景だなぁと思いますが、懐かしく感じる方もいるのではないでしょうか。

弊社の会長・鈴木がよく言うことに、「採暖と暖房は違う」があります。上記は「採暖」ですね。まぁ風情はあるのですが、その場を離れて廊下に出ようものなら身震いするほどの寒さに見舞われる--までがワンセットです。

「暖房」の「房」は部屋、区切られた室・形を意味しますので、空間を暖めるのですね。そのため、床・壁・天井・室内の空気もすべて同じ温度に暖まれば、どこにいても寒くないわけです。

暖房の設定温度を上げれば我慢できる?

これが、断熱性能の悪い家だと、エアコンで一所懸命空気を暖めても、外気温と大差ない建物の床・壁・天井からどんどん熱が奪われていきます。とりわけ窓からの熱の出入りは大きく、ぺガラスのアルミサッシ窓で50%、シングルガラスではそれ以上の損失となります。古い木造住宅は建具のすき間や床下からの冷気の流入など、気密も悪いためザルを懸命に暖房しているような状態なのです。もはや我慢で済む問題ではないですよね。これだけエネルギー価格が高騰し、室温と健康の因果関係がはっきりしている現代では、温熱環境の向上は必須です。

YKK窓の教科書より

新築もリノベーションも「暖かい家づくり」からはじめよう

家づくり経験者なら誰しも分かる、新築でもリノベーションでもコストに比べて「要望は膨らむばかり」だということ。それでも、現実問題としてコストに限りはあるわけです。最終的にはコスト配分の決断になってくるわけですが、ここで基本を抑えておくと、家づくりが整理できますし、失敗が避けられると言っても過言ではない?かもしれません。

鈴木工務店が考える“基本”とは、小見出しにあるように「冬暖かい家」をつくることです。暖かい家づくりをすれば、夏は涼しいのです。あとから改善しにくい家の躯体に関わるところにしっかりと手間とコストをかけること。基礎、構造はもとより、快適な温熱環境を確保する気密・断熱・換気の計画を立て、材料と施工法を選び、シミュレーションと施工管理を行うということです。

2022年竣工のS邸。勾配天井の下に広がる2階リビング・ダイニング

家全体が同じような温熱環境であるための工夫と間取りは相関関係にありますから、健康と暮らし、間取り、動線という具合に、家全体のプランニングがつながっていきます。ちなみに、どうつながっていくのかは、鈴木工務店の家づくりセミナーでお伝えしてます。

国交省の住生活総合調査によると、法体系による住宅の省エネ基準の強化もあり、住宅への不満を持つ人の割合はここ20年で全体としては半減しているとのこと。それでも以前として残る不満トップ5に「断熱性」があります。年々、断熱サッシやドアの性能も向上し、断熱や気密の施工も数々の事例が生まれて改善されていくなか、これからは「断熱性」に後悔しない家づくりが可能になってきています。なおさらのこと、人も家も長く健康でいられるように、家づくりのどこに注力するかをしっかりと考えたいものですね。