2階リビングと1階リビング。どちらを選ぶ?
まず立地環境からリビング・ダイニングの配置を検討します。これは鉄板のセオリーで、設計者は必ずチェックします。でも、立地環境だけでどちらがベストかを判断するのは尚早です。たまに訪れる美術館やカフェならともかく、ずっと住み続ける家ですから、やはり暮らしが一番のポイントになります。
たとえば、来週末の10/14(土)に開催する家・くらし見学会「住んでいる人に聞いてみよう」の会場である町田市根岸の「手をつなぐ」を例に考えてみましょう。こちらの家は入居から1年半経過しています。四季を経験し住まいと人が馴染んできたころですね。
住宅は施主様ご実家敷地の一画に計画されました。まさしく「スープの冷めない距離」で母屋の庭も眺められる環境です。また、高台にあり西側には丹沢山系の眺望が広がります。家族が集うリビング・ダイニングは1階でも2階でも居心地よくつくることが可能な条件でした。
では、お施主様である息子さん夫婦がイメージする暮らしはどうだったかというと--母屋の気配は感じつつ、同じ敷地内でここちよい距離感を保ちたいというものでした。そうすると、2階リビングが優勢になってきますね。母屋との視線の交差や車の出入りの影響を受けにくく、落ち着いて過ごせること。眺望を得ながら、母屋の灯りで生活を確認できることなど、メリットがいくつも浮かんできます。
一方で、2階リビングのデメリットとしてよく上がる、将来年を重ねた際の上り下り問題については、実際に介護を経験している母屋の生活が参考になります。寝たきりになってしまうと、入浴は福祉のデイサービス等を受けて行うし、食事もベッドのそばで摂るようになります。寝たきり前のギリギリまでトイレはなんとか行きたいというのが多くの方の本音ですから、寝室とトイレが近い配置は必須です。逆に、それ以外はあまり重要ではないかもしれません。(もちろん、いよいよ高齢になってから、住む人がどこでどう過ごしたいかによります)
とすると、自力で生活できるうちは家の中でも活動量が多いほうが健康寿命に寄与する可能性が?2階リビングも毎日の階段の上り下りで、宅トレに貢献しているかもしれません。
「ただいま」「おかえり」をイメージしてみる
リビング・ダイニングの配置に限らずですが、家のプランニングは暮らし方が一番のポイントになります。しかし、家づくりを考え始めたばかりのお客様とお話しをしていると、ここが曖昧でイメージできていないことがよくあります。instagramやpintarestで見た雰囲気が先行して2階リビングを推したり、隣家に囲まれている立地環境でも1階リビングと大きな窓に憧れを抱いたり、誰かのどこかの住まいを自分たちの家づくりに当てはめて考えてしまいがちです。
もちろん、参考資料としてはとても有用で設計も共有させてもらうのですが、ぜひそこからさらに「自分たちの暮らし」に落とし込んで考えてみてください。ただいま、いってらっしゃい、いただきます、おやすみなさい、といった日常をどんなふうに過ごしたいか。身近なところからイメージするのが良さそうです。
鈴木工務店の家づくりでは「設計カード」という要望書に暮らしのイメージを存分に書いてもらっています。A4の冊子で書き込みごたえはありますが、画像や書き切れない部分はクラウド上で共有するなどして住まい手自身の想いを深めてもらうのです。
家づくりと、暮らし始めてからの実体験を住まい手に直接聞けるのは「家・くらし見学会」(OB施主住宅見学会)だけ
これまで触れてきたように、家づくりで大切にしてきたことや実際の設計打合せや施工確認の感想などを、住まい手に直接聞くことができる機会が家・くらし見学会「つくっている人に聞いてみよう」です。コロナ禍で長らく中断していましたが、今月から再始動します。とはいえ、お住まいに訪問するのでそう何度もある機会ではありません。この機会をお見逃しなく!見学会参加ご希望の方はこちらの詳細ページからお申込みください。
見学会住宅の「手をつなぐ」はこちらの小冊子『かきのたね』バックナンバーblogでもレポートしています。
1階リビングにも眺めや視線の抜けをつくることが重要です
1階リビングの画像はこちらから。HPのWorksで詳細をご覧いただけます。
「くらしを紡ぐ」@世田谷区。眺望は得られない住宅街でも、庭先の緑に開き、街並みに対しても閉じ過ぎず。プライバシーと空間の抜けを両立させる外構計画です。
「くらし広げる家族の家」@玉川学園。高台で2階リビングの案も検討されましたが、吹抜けのある1階リビングから景色と陽光を採り入れるプランとなりました。