きっかけは様々でも、共通する目標は住宅性能の向上
建替えかリノベーションか決めかねてご相談にいらっしゃるお客様は少なくありません。きっかけは家の相続や老朽化、ライフステージの変化ですが、皆さん共通する目的は「住み心地のよい家」にアップグレードしたいというもの。とくに築年数が経っている家では「寒い」「暑い」の解消、耐震に不安がある場合はその補強などが挙げられます。
断熱性能を表す基準に断熱等性能等級(品確法)があり現在は7等級まで設定されています。数字が大きいほど性能が高く、長期優良住宅は等級5(ZEH水準)が必要とされています。2025年にはすべての新築住宅で等級4(平成11年次世代省エネレベル)、2030年には等級5(HEAT20G2レベル)の住宅性能が義務付けられます。
これからの家づくりでは建替えでもリノベでも、温熱環境を左右する断熱や気密性能は外せない項目になっています。
家族構成やライフスタイルに合った住まいを叶えるには?
お子さんが独立して夫婦二人暮らしになったり、定年退職を迎えて家にいる時間が長くなったシニア世代。これまでの暮らしで家への不満がはっきりしている分、必然的に要望も具体的なことが多いです。
一方で、実家を相続したり中古住宅を購入した若夫婦や子育て世代は、これからも変化していくライフスタイルを見据えながら家づくりをじっくり考える傾向があります。
どちらの世代も建替えとリノベで迷ったら、まずは設計施工の工務店など建築士のいる作り手に相談することをおすすめします。
たとえば間取りについて。ライフステージによって求めたい間取りも異なりますが、作り手から提案するのは基本的にシンプルで可変性がある間取りと空間です。シンプルな構造は家の強さにつながりますし、多用途に使えたり間仕切りを容易につけ外しできる可変性のある間取りは、暮らしの変化に柔軟に対応してくれます。どちらも家を長く愛着をもって住み続けるために欠かせないポイントです。
また、工務店の建築士と直接やりとりをするメリットは、間取りやデザインの話だけではなく、温熱環境など住宅性能向上のポイントや施工の難易度、効果まで加味したアドバイスが得られること。とくにリノベーションは壁紙や水回り設備の更新など、お化粧直し的な工事が一般的には多い印象ですが、まずは住宅性能を確保することで冬暖かく夏涼しい家を叶える道筋を提示できることが肝心です。それができるつくり手が、実際に設計段階で温熱環境や省エネ性能の試算ができ、構造も確認し、施工がわかる設計施工の工務店だと言えます。
シニア世代の暮らし替えの場合
「家は小さくなってもいいから暖かい家にしたい」「夫婦の寝室は別がいい」「子供の家族が泊まれる場所がほしい」「介護状態になったときに1階で寝られる場所の確保」などなど。優先度がはっきりしていることが多いため、あとは費用対効果や家にかける予算との兼ね合いで建替えかリノベかを検討していくことが多いです。
稀に、夫婦二人暮らしになるけれども孫たちが遊びに来ることを考えて家は大きいままを希望する方もいらっしゃいます。そうなると、昨今の建築費の高騰を考えてもリノベーション一択となります。
また、長年の暮らしで持ち物が多くなっている方がほとんどなので、暮らし替えのタイミングでの断捨離は必須です。こちらも苦手だったり、捨てることができない場合には、やはりコンパクトな家への建て替えは難しくなります。
これまでの鈴木工務店の実績では、延床45坪の2階建から20坪弱の平屋や、27坪程度の2階建に建替えた例がありますが、皆さん気持ちいいくらいに断捨離に励んでいました。ご自身や家族だけではうまく進まず、断捨離カウンセラーのようなプロと一緒に身軽になっていった方もいらっしゃいますね。
若夫婦や子育て世代の場合
実家を相続したり、中古住宅を購入してリノベーションする場合、それが昭和や平成の注文住宅だったりすると個室数が多く延べ床面積も大きめのことが多いです。家全体を工事対象にして間取りの変更や断熱改修(古い家は断熱材施工がほぼ不十分)、状態によっては耐震補強などを行うと、場合によっては新築より高額になるケースもあります。
子育て世代でまだまだ暮らしの変化が大きい時期には、段階的なリノベーション計画を立てて、第一期はLDKのある1階のみ行い、子供が成長して個室が必要になってから2階に手を付けるという方法も。あるいは、予算によってはじめから工事除外エリアを決めてコンパクトなリノベーション計画にするなど工夫が必要です。
建替える場合にも、既存住宅ほど大きくせず、コンパクトで性能のよい家を検討することからはじめるとよいでしょう。
リノベーションが割安なわけではない理由
大抵の方がリノベーションをコストの面から検討します。しかし、前述のように家の大きさ、工事対象範囲の大きさはコストに比例しますし、築年数が古い場合は断熱改修や耐震補強が生じるため、コンパクトな新築より高くつくことがあります。
解体も残すところを確認しながら手壊しで進めるのが基本なので時間もコストもかかります。トータルで費用対効果を考えると、コンパクトな住まいへの建て替えのほうがメリットが大きい場合もあるのです。
費用体効果については、実績のある建築士であれば既存住宅の竣工年、改修履歴、図面、現在の状況からある程度判断することができますので相談の際に聞いてみましょう。
長く住み続けたいと思う家をつくろう
人生100年時代。最期まで自宅で過ごさないとしても、たとえば60歳の暮らし替えの場合今後20~30年は自宅に住み続けることになります。もちろん、先がまだまだ長い子育て世代の家づくりにおいても同様に、家に愛着をもって長く住み続けられるかは、とても大切なポイントです。
立地環境が気に入り建売住宅を購入して子育て期を過ごしてきたご夫婦は、これからの暮らしを考えるとき「ビニールクロスに包まれた白い自宅が味気ない」と感じたそうです。また、木板だと思っていたキッチンの扉を拭いていたら木目が消えてプリント合板だったとわかり「悲しい気分になった」という方も。
一方で、無垢材は削れても凹んでも木であることに変わりはなく、ずっと芳香や質感をたのしむことができます。無垢木をはじめとする自然素材は、経年変化により艶や灼けで味わいを増し、住まいに愛着が湧く要因になるものです。
建替えでもリノベーションでも、先に触れた住宅性能とあわせて自然素材を用いた家づくりで、長く住み続けたい家を実現したいですね。ご家族が集まる年末年始に、2024年の家づくりの話に花を咲かせてみてはいかがでしょうか。上記の実例を含めたポイントが、参考として役に立てば幸いです。