戸建住宅とマンションの資産価値やウェルビーイングについて考える・注文住宅と断熱改修を手掛ける町田市の鈴木工務店

あらゆる視点で比較対象となる戸建住宅とマンションについて。
資産価値?暮らしの満足度?求める価値に応えるのは--

2024年2月竣工の「ふたりの家」。約20坪のコンパクトな省エネ住宅です。床材はカバザクラ、柱と梁は国産の杉材、壁は漆喰の左官仕上げです。断熱等級6、HEAT20G2クリア、耐震等級3、太陽光発電採用のゼロエネルギーハウスです。

よく言われているのが、マンションは資産性が高いということ。主に立地に価値が付くので駅近や大規模開発のあるエリアなどでその特徴が顕著であることは知られています。一方で戸建は建物の資産価値は建物価格の減価償却で下がるけれど増えることは日本ではほぼありません。よほど地価が上がらない限りは資産価値としてはマンションに軍配が上がるのが現状です。

一方で、断熱気密性能や耐震、災害時の対策など住宅性能でみると、マンションは億ションでもそうでないものでもほぼ変わりなく(竣工年による違いはあり)100点満点中70%程度とのこと。戸建住宅はつくる側の技術力とかける資金次第で30~90点と住宅性能に大きな差が出るイメージとも。ちなみに、マンションのつくりや価格には明るくないので、マンション価格情報を独立系(スポンサー無し)サイト運営の立場で発信しているコンサルタントさんの動画や記事を参照しています。

上記の動画やコラムの締めには、このコンサルさん、次の住み替え(これまでに資産性を重視した物件選びで住み替えを重ねてきた)ではマンションは選ばないだろうとも言っています。

これは、単にマンションより戸建がいいと言っているわけではなく、ライフステージと目的にあった住まい選びの結果として、現段階での住み替えのイメージを語ったものなのですが、マンションの資産価値を研究して発信している人の発言として面白いなと思いました。

要は、何を目的に住まいを選ぶかといったことなのですが。例えば、新婚だったり子供が小さかったり、転勤や転職でライフスタイルや住むエリアが未確定な状況の世帯には、住み替えで利益も生んでくれる資産性の高いマンションがフィットするのは理解できます。

築38年のマンションリノベーション。家族5人で過ごした家を、子どもたちの独立を機に改修しました。外壁に面する壁に断熱を付加して、開口部には木製建具による内窓を設けました。床と壁の一部は杉の無垢板を張っています。間仕切り壁を減らした開放的な空間は北側まで室温がほぼ均質に保たれます。暮らしのレポートは季節の小冊子『かきのたね』で綴っています。バックナンバーはこちらからどうぞ。

しかし、別の視点を持つと、例えば子供を庭のある家で育てたいとか、仕事がリモート中心になりゆとりのある環境や間取りで生活したい、自分にとっても子どもにとっても長く愛着の持てる実家として家を建て住み続けたいなどなど、資産性よりも暮らしの満足度を優先する場合、注文による戸建て住宅は有力候補となります。そこに、先ほどの住宅性能で100点に近づく家づくりを求めるとなると、自ずと新築戸建ての注文住宅が選択肢として上がってくるわけです。

ちなみに住宅性能については、それ自体に価値を見出すというよりは、性能がもたらす省エネルギーな生活や健康的な暮らしが重要であることは言うまでもありません。子供の喘息やアトピーの症状が軽減されたり、シニア層なら健康寿命が長く保てたり、プラスの変化に価値を感じるわけですね。新築戸建てがそうした価値を感じられる家づくりの有力候補であることに変わりないのですが、中古住宅や既存住宅の断熱改修でも満足度の高い家づくりを叶えることができます。実際、弊社のお客様には住み慣れた既存住宅やマンション、団地を断熱改修して間取りも変更し、快適に住み続けている人がたくさんいらっしゃいます。

築35年の鉄骨プレファブ住宅のスケルトンリノベーションです。構造部分には手を加えられないメーカー住宅を断熱材で包みなおして無垢の木の質感を感じられる仕上げにし、空間を刷新しました。

建物にも資産価値を。地球温暖化対策がこれからの家づくりを見直す契機に

弊社の会長である鈴木もよく嘆いているのですが、「日本では建物は減価償却の対象で資産価値を認めないから性能の高い住宅が増えない」と。震災のほとんどないヨーロッパでは古い建物が残っていて、それに価値を見出し住み継ぐ文化もあるため、一般的には日本のように新築がたくさん建つ市場はないのですが、それでも、鈴木がスイスを訪れた際には、住宅に億の資金をかけて高性能で長く住み続けられる家を建てている現場を訪れています。それも、いわゆるセレブ層の住宅というわけではなく。どうしてしっかり資金をかけられるのかというと、かなりざっくり言えば、銀行融資の担保が建物に対してつくからです。日本の場合は土地と人物(属性)につくわけで、建物は22年の減価償却に照らすと担保として価値を見出しにくいのです。この評価を変えない限りは、いくら政府が補助金だ税制優遇だと支援しても、ヨーロッパほどには建物性能は上がってこないですよね。

政府によるカーボンニュートラル宣言(2050年までに温室効果ガスの排出量を全体としてゼロに)が、日本の住宅性能を向上させる契機だとすれば、その動きが不動産評価にも反映されなければ十分な効果が得られず宣言の目標も達成できないのではないでしょうか。日々、設計施工のレベルアップに努めているつくり手としても声を大にして訴えたいところです。

2023年竣工の世田谷区の住宅。断熱、気密、耐震性能と住み心地を叶える住まいは、いつ訪れても住まい手による暮らしの手触りと心地よい家時間を感じられます。

これからの家づくりに欠かせない視点。
住宅性能と保守管理、履歴、保全の重要性。

住宅の設計士は施主に対して、住宅の省エネ基準への適合について施主へ説明義務を負います。また、長期優良住宅では建物の保全計画を立てて保全の状況を報告する必要もあります。鈴木工務店では法定の10年点検のほかに、3ヶ月、1年、2年、5年の定期点検を行っています。点検以降もお客様のメンテナンス履歴を保管し建物を健やかな状態に保つサポートを行っています。もちろん、長期優良住宅の申請や各種住宅性能評価書の取得にも対応しています。

具体的な不具合がなくても、定期的な点検は建物の状態を確認するきっかけになります。住まいの健康診断のようなものですね。建物の健康は住む人の健康に影響するわけで、そういう意味では、工務店のアフターサポートを家守りや住まいのかかりつけ医と呼ぶのはごく自然に思われます。

住宅性能(評価書など含む)の確保や保守管理をきちんとおこなうことが、建物の評価と資産価値を高めることにつながります。そして、これから家を建てる人には(もちろんつくる側にも)欠かせない視点となります。つくり手としては実直に遂行して、お客様の住まいと暮らしが長く健やかに保たれるように、そして近い将来、日本の住宅の評価が欧州に近づくように、家づくりとサポートに努めるのみです。