徒然とおるの建築まち歩き 太古へ誘う福井の旅/福井県立恐竜博物館、福井県年縞博物館

季刊誌『かきのたね』で連載している「徒然とおる」2024年春号から。徒然とおるのまち歩きをおたのしみください。

福井県立恐竜博物館(設計:黒川紀章建築都市設計事務所)。ドームの中はメイン展示室。

敦賀新幹線開通に合わせて、能登半島地震復興支援ができればとの旅企画です。15件の公共建築をメインに駆け足で回りました。築年数が20~30年と古い物件が多く、建物の維持管理と利用状況に興味がありました。

福井駅の改札を出ると恐竜が出迎えてくれました。1988年の発掘で恐竜の歯を発見、その後、新種の恐竜も発掘されています。メタポリズム(生物の新陳代謝や成長の仕組みを建築に取り入れようとした建築運動)を牽引した一人で、バロック(歪んだ真珠の意)好きな黒川紀章設計の福井県立恐竜博物館を見学。長辺約80mもあるメインの常設展示場は恐竜の卵を連想させる回転楕円体です。シンプルな天井・壁面に覆われた空間に大小数多くの恐竜が展示されていて、恐竜時代に迷い込んだのかと錯覚をするほど。疲れを忘れて楽しみました。

エントランスホールから地階まで降りる動線空間(見上げてます)。

恐竜のメイン展示室。

名勝「三方五湖」の一つに①直接流れ込む河川がない②湖底に生物が生息していない③時間が経過しても埋まらない、「年稿」が造られる理想的な環境の湖「水月湖」があります。「年稿」は、「長い年月の間に湖沼に堆積した層が描く特徴的な縞模様の湖底堆積物」です。縞模様は季節によって違うものが堆積し、明るい層と暗い層が交互に重なることで出来、樹木の年輪に似ています。年代が不明確なものを知る一つに「放射性炭素年代測定法」があるそうで、水月湖の年稿が考古学や地質学における「年代の標準ものさし」として、2012年にその価値が世界的に認められたそうです。展示は水深34mの湖底下に7万年に渡り眠っていた厚さ45mの縞々をなす泥の堆積層を完全標本として取り出したものです。美しくもあり、地震や富士山大噴火の記録でもあり、大昔の景色を旅する思いでした。

年縞の標本。左端が最も新しい年縞(2017年)。

福井県年縞博物館(設計:内藤廣建築設計事務所)。