土地探しからの家づくりと中古リノベーションの現在地

土地探しからの家づくりでは、現在地と条件の照らし合わせを都度行おう

土地探しからご一緒したY邸。実際にいくつも土地を見て、最終決断されています。自然を感じて暮らしたいという想いはそのままに、現実問題として宅地造成やインフラにかかるコストも考えて、住宅地の中で借景が得られる場所を選びました。

家づくりの問合せで、土地探しから検討されている方の割合は多いのですが、なかなか条件にあう土地に巡り合えていない状況をお聞きします。

町田市鶴川に位置する鈴木工務店でも、協力不動産会社等にヒアリングしてみるのですが、コロナ禍前なら実現できた総予算感が、現在では成り立たない状況になっていることを痛感します。

都市近郊の不動産価格の高止まりと建築費(資材、人件費含む)高騰のダブルパンチによるもので、容易に手が届かない状況は、首都圏での新築着工数の減少(国交省調査報告、各種新聞、レポート)として数字にも表れています。

現状がいつどのように変わるのか、というよりも、次章に挙げるように、分かっていることと不透明なことを見極めて家づくりの判断材料にするのがよいように思われます。

どうしても予算が追い付かない場合には、条件や計画の変更をする必要が出てきます。その時、「あきらめる」のではなく、別の選択肢を前向きに「選ぶ」サポートができるのが、つくり手である工務店です。

たとえば、不動産会社が売りにくい不整形地でも、注文住宅でなら魅力的な住まいが実現できることが十分にあります。あるいは、中古住宅を取得して断熱改修リノベーションをすることで、建売住宅よりも自由度が高く性能も確保された住まいを手に入れることも。

土地の特性を見出して住まいをイメージする「土地選び」「物件選び」の視点をもつと、今まで見逃していた土地との出会いが広がるかもしれません。(土地選び、についてのblogはまた別の機会でアップしていきます)

建築費を取り巻くあれこれ。建築のつくり手側から分かること

CADデータによる精緻なプレカット材と、断面欠損が少なく効率的な金物工法で建方が進みます。大工の手は、暮らしの中で直接目や手に触れる造作材に生かされます。

◎人件費 上昇基調で下がることはない

それはそうですよね。どの業種でも同じですが、賃上げの波は世界に遅れて日本全体に及びます。なかでも、人手不足が顕著な建設業の人件費は年々どころか日常的に上がっています。DX化による省力化は、大手ゼネコンの現場からはじまっていますが、個々の職人レベルにまで届くには相当な時間、あるいは世代交代が進んだところからになりそうです。

町の工務店も社内での設計監理の効率化を進めています。一方で、職人への浸透や連携を図るのは一朝一夕にはいかないというのが現状です。しかし、歩みは止めず進めていきます!

◎資材価格 円安の影響下で上昇基調

建築資材の多くを輸入に頼っていることから、円安の影響は免れません。円相場を的確に予想することは難しいのですが、第一生命経済研究所のレポートにAIを活用した予測が出ていました。2024年4月レポートの時点での楽観ケースと悲観ケースにて、年末で対ドル120円(楽観)と230円(悲観)となっています。10月17日現在が150円ですから、やや楽観よりの数字ですが、この後に米国大統領選が控えていることを考えるとどちらに転ぶか分かりません。

いずれにしても、コロナ禍前の円相場に戻ることは考えにくい状況です。そうなると、コロナ禍後に円相場により価格上昇した分は、よくて現状維持で、やはり下がる要素はないと言えそうです。

コロナ禍以降・円安傾向以来、とくに住宅設備メーカーは年に2度も価格改定を繰り返すところもあり、注文住宅でじっくり考えながら家づくりを楽しみたい人にとっては、見積価格が変動してしまうので安心していられませんよね。だからこそ、つくり手側が施主に現状を正確に伝えて、事前に対応策を講じておくことが肝心です。

◎工期 長くなる傾向

2024年4月から流通業、建設業では遅ればせながら労働時間の上限規制がかかっています。物が届く時間はこれまで通りではなくなりました。(これは個人での宅配でも感じられるのではないでしょうか)

流通、労働時間、人手不足と重なれば工期は自ずと長くなります。段取りをよくして効率化を図りつつも、安全に現場を進めるための時間と環境の確保は不可欠です。ある程度のゆとりをもって臨む方が、結果的には施主にも心配をかけずに現場をすすめることができます。しかし、五月雨式に延びるのはNGです。工期はコストに直結します。施主発信による設計変更や追加をする場合には、工期への影響についても理解しておきましょう。

中古リノベーションに適した物件とは?

築25年の空き家だった住宅をリノベーションした現場です。間取り変更による間仕切り壁の撤去部分には、構造の補強(バッテンのブレース)を施しています。

土地探しからの新築が可能か、中古住宅のリノベーションがより良い選択となるか。物件探しが行き詰まったら、総予算と希望の条件をあわせて見直してみましょう。

リノベーションを前提とした中古住宅については、首都圏ではとくに新築マンション価格上昇に引っ張られる傾向にあるようです。一方で、不動産価格(評価額)は国税庁の評価耐用年数に基づいていることがほとんどですので、木造の場合22年でゼロになる計算です。古ければ古いほど価格が抑えられますが、リノベーションして長く住むことを考えると、容易に手を出すのは危険です。

皆さんもよく聞く新耐震を基準にするのであれば、1981年6月以降に建築確認を取得した建物が相当します。しかし、これ以降の建物であっても、解体してみると白アリにやられていたり、構造的に弱い部分があったりすることがあり、何らかの構造的補強をするケースが多いのも事実です。また、断熱、気密性能は弱く、しっかりと改修する必要がある年代でもあります。

2000年以降の住宅であれば、長く快適に住むための性能改修に要するコストが抑えられるので、リノベ費用を掴みやすいとお伝えしています。少し前までは、2000年以降の中古住宅はまだ市場で数が少なかったのですが、今では築20年超えでも2000年以降となりましたので、ちらほら出てきていますね。築古に比べると売出価格は高いですが、リノベ費用と総合的に考えて判断することをお勧めしています。

中古リノベーション特有の手間があることを知っておこう

マンションリノベーション手壊しの解体現場。解体業者のほかに、図面を読込んで残す箇所などを理解している大工も一緒に解体に加わります。

リノベーションの場合、解体は基本的に手壊しです。その分、人手がかかります。これまでのお話しでも分かるように、人手がかかる=コストと工期がかかるということで、これは木造住宅でもマンションでも同じです。

また、解体してみて分かる建物の傷みや構造上の弱点、インフラの劣化などもゼロではありません。(もちろん、ある程度の想定はして計画を進めます)

確かに、基礎や屋根の新規工事が不要な分、一般的には新築に比べてリノベーションの方がコストを抑えられますが、建物の状態や求めるスペックなどによって必ずしもコスト的に優位とは言い切れないことも。リノベーション特有の手間があることを知っておくとは、物件選びや解体後に分かる問題点に対する冷静な対応力を培います。

上記の解体現場の完成形。無垢の木の床と天井、建具の枠など、手触りのある仕上げに大工の手が生かされます。

鈴木工務店では、定期的に家づくりセミナーを開催しています。今月19日開催のテーマは「建替え派・リノベーション派」です。ご興味のある方はぜひご参加ください。
ツアー&セミナーともにつくるいえ「建替え派 ・リノベーション派」 | 株式会社 鈴木工務店 (suzuki-koumuten.co.jp)

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