エアコンなし、冬はペレットストーブを楽しむエコライフをレポートします
鶴川の中古住宅へ10年前に引っ越してきたKさん一家。ドイツ語などを教える大学教授のご主人は、3・11をきっかけにエコロジカルでシンプルな生活を意識するようになりました。冬の寒さと夏の暑さを対策したいこと、「なるべく電気に頼らない」「風通し」「つどい、楽しむ」の3つをキーポイントに、リノベーションに踏み切りました。
無断熱だった壁には自然素材のセルロースファイバーを、既存窓には断熱用の内窓を設置。外気を遮断する玄関框のサッシは奥様の出身地・北海道仕様です。木質燃料のペレットストーブの暖気が2階に届くよう、上下階の通気孔もつけました。
一方、夏の日射対策は西側玄関と南側リビング前に新たに植えた3本の木。太陽光発電を設置するもエアコンはなく、なるべく電気に頼らない自然な暮らしを実現しています。
つどい、楽しむ暮らし
ジューンベリーの実が赤く色づいた庭で家族そろって朝食をとるのが、最近の日曜日のスタイルです。晴れた午後には自転車で出かけ、雨が降ればボードゲームに興じる。「電気に頼らなくても生活はそんなに困らない。土鍋で炊いたご飯の美味しさやボンボン時計の音。逆に暮らしは豊かになった気がします。以前の家は暗い雰囲気が好きじゃなかったのですが、ここまで変わるとは思っていませんでした」
杉板を多用し、家の中は木の香りに包まれています。1階は以前あった廊下や、キッチンとダイニング間の壁を撤去し、広々としたLDKに生まれ変わりました。クリスマスパーティーでは、キッチンの大きなカウンターに奥様が腕を奮ったドイツ料理が並び、大勢の来客が集います。
2階の東側にはご主人の書斎と書庫、夫婦の寝室とクローゼットを配置。既存建物の軽量鉄骨造を生かし、広いワンルームに柱を立てることなく、家具や可動式の杉パネルで圧迫感のない空間に。一部屋を2つに分けた子供部屋も、階段上のデッドスペースにベッドを作り、十分な空間を確保しました。
美術教師の奥様が以前作った木製の家具や、古い年代物の家具も配され、レトロで落ち着いた雰囲気を醸し出しています。今も現役の足踏みミシン、振り子時計、ダイヤル式の電話もエコな暮らしの支えに。「以前はプラスチックの家みたいで、手を加えられなかった。これから壁に絵を描いたり棚を付けたり、楽しみながら仕上げていきたいです」と奥様。K邸のリノベーションはこれからが第2章です。(まちびと・2018年夏号より/取材・Vision Design )
いえ時間を育んだ2020年
取材から約2年、コロナ禍にK家の様子を伺いました。「本当にリノベしておいて良かった。大人も子供も皆、在宅ワークと学習で、家族4人ずっと家にいるのですが、ストレスなく気持ちよく過ごせます」
家族がつどうLDKと、小さくとも各人のプライベートスペースを整えたことが大きいと。自然素材で仕上げた空間は、身体にやさしい温熱環境とあわせて、くつろぎのいえ時間を育んでいました。