日本では、多世帯住居といっても二世帯住居、多くても三世帯住居がせいぜいです。その建築タイプは、共用型と分離型に大別できます。分離型は、上下に重ねる上下分離型(内階段・外階段)と平面的に分ける長屋型に分けられます。
共用型の場合も、玄関・キッチン・浴室・リビングなど何を共有するかによってさらに細かく分類できます。
建築事例など、詳しくは、【住まい教室―健康な家】『プランで考える二世帯住宅』にご参加ください。
世界の住居の多世帯住居の特殊な例として、中国の客家土楼があります。客家とは漢族の一系で、中国西南域の山地に分布し、東南アジアに流出している人々は華僑ともいわれます。
客家の住居として特異な形態をした環形土楼は、直径30~60mのドーナツ状の平面で3~5階建の木構造。外壁は版築による土壁でできています。
客家土楼外観 客家土楼中庭
面白いのは、1つの建物には、ひとつの一族で住んでおり、大家族を構成するひとつの家族は、1~3,4階に積み重なった1つのユニットを所有している点です。中心の中庭に面する1階にどの家族もキッチンと食堂を持ちますが、上階のそれぞれの個室には、3,4ヶ所ある共用階段を使って上り、共用廊下を通っていきます。ひと家族という単位より、一族という単位の結びつきがより強いためで、外側に閉じた円環状の形状も外敵から一族団結して身を守るために生まれた形です。
図の紹興楼は、1965年に建設され、18世帯が住んでいます。調査時の2000年には、7世帯で、同心円の放射状に分厚い土壁の外側に部屋を増築していました。増築部分はレンガ積みかRC造で下から上に増やしていきます。
近年では、中国の経済成長と都市への流出のため、多くの客家土楼にも空き室が目立つようです。それでも、すぐ隣の部屋を所有するより、別の縦の1ユニットを所有するという「ルール」は厳守されているようです。(小栗克巳)
写真・図の出典:『福建省永定県の客家土楼における居住実態について』