以前の家が手狭に感じ始めた頃、一冊の本に出会いました。そこに書かれていた「自然との共生」「地元密着の工務店の技術を守る」という思想に感銘を受けたのです。そこで、地元で長年にわたりパッシブな家づくりを続けている鈴木工務店に我が家の設計施工を依頼しました。太陽や風など自然の力を利用しているので、夏の暑い日に帰ってくると涼しく、冬の寒い日はあたたかいんです。雨水タンクを設置したので、雨の日も得をした気分ですよ。設計段階も楽しい思い出です。当時、小さかった息子の「楽しい家がいい」というリクエストに応えて、廊下にうんていをつくりました。また、高齢の両親のために階段の滑り止めを朱色に塗るなど、細かいところまでよく話し合いました。築年数が経ち、天井や床の木部がアメ色に変わる様子や、大きく枝を広げた庭の木々を眺めては、ますます自分たちらしい家に育っていると感じる日々です。

ご両親とご夫婦、お子さんが暮らす二世帯住宅で、段差のある敷地を生かした3層構造の建物です。ＲＣの地階部分からアプローチし、各階は室内階段のほか外階段でもつながります。服飾の研究者である奥様はとにかくたくさん蔵書をお持ちだったので、廊下には床から天井までの本棚と読書ができるベンチを設けてライブラリーに仕立てました。建物の配置は、草木の手入れを日課とするご夫婦の暮らしぶりをお聞きし、家の中のどこにいても庭の緑が目に入るようコの字型を提案しています。各階は間仕切りの少ないオープンな間取りですが、ＯＭソーラーで温度差の少ない温熱環境を保っています。2階のバルコニーと庭をつなぐ外階段を設け、家の内と外で自由に行き来のできる二世帯住宅です。